フランスには、国家のモットーとは全く別次元で「己は愛の国である。」という基本、のようなものがある。
基本、基軸、あるいは信念。言い換えはいくらも出来るが、つまるところ愛という不可視で不定形な概念、美しく素晴らしく柔らかな、時として嵐のごとき情熱的な情動を、愛している、といったところだろうか。

「‥‥その辺をねぇ、鑑みれば麗しい光景だと思わなくもないんだけどねー?」
「あはは」

『アンニュイ』だとかなんだとか、実に直球な題名が似合いそうな気だるさでため息のように零した麗しの母国語を彩ってくれたのは、ほにゃりとした愛らしい笑い声だった。
身体を窓の桟へと持たせかけるようにして外へと視線を遣っていたフランスが振り返った先には、天使の笑い声を立ててくれた嘗ての養い子の姿。

「んー、カナダはいつでも可愛いねぇその可愛いケツお兄さんに揉ませて今からでもフランス領にならない?」
「なりません。」

ほにゃりとした声できっぱり言い切られた拒否に苦笑する。互いにとっての母国語での遣り取りはある種の予定調和、英国紳士が言うところの天気の話題みたいなものだ。もっとも、自称英国紳士(半分は確実に正解だけれども)の腐れ縁に同じ問答をすれば「ブルゴーニュを俺に譲り渡した後速やかに腐れ落ちろあらゆる場所が。」とか笑顔で言われるだろうけれど。
そういう意味ではこの天使ときたら殴りもしなければ抗議もしないしビームも出さない、実に品良く美味しそうに育ってくれてお兄さん感涙です。というものである。言わないけれど。
言わない代わり優雅な足取りで歩み寄り、寄り添うように並び立ったカナダの頭を子どもの頃のようにくしゃりと撫で、そうして戸外から届く歓声に、揃って窓の外を眺めながら二人して苦笑する。
視線は平行。ビルの地上階にあたるこの場所は、ここに集まったいくらかの『国』が次の議場へと移動するまでの控え室として用意されたフロアであった。どうやら移動手段の手配に手間取っているらしい。歩いていけば早いだろうにとは思いつつ、さして仕事熱心というわけでもないフランスやいくらかの国はこのまま会議が流れればいいのに。と内心でぼやきながら、思い思いの待ち時間を過ごしていた。
背筋を伸ばして椅子に腰掛け書類をチェックするゲルマン人、くるんと巻いた一ふさの髪が妙に牧歌的な栗色頭の青年がその大きな身体に凭れ掛って眠っている。珍しく和やかな(‥‥まぁ一見しただけでは解らないのだが)雰囲気で言葉を交しているのは小柄な黒髪と大柄な白髪。極東地域においては彼らは隣国だったことを思い出す。一方、フランスの隣国たる海峡向こうの島国の姿はない。仕事中毒の気がある男のことだ、どこか別のところで仕事中なのだろう。自分とカナダはご覧のとおりの窓辺で憩い、そうして主催地主催国であり移動手段手配中である筈の、超大国はといえば。

瞬間、弾けるように上がった歓声に、フランスとカナダは改めて戸外へと視線を遣る。

立ち並ぶビルの隙間を縫うように設えられた、小さなバスケットコート。
目の覚めるようなブルースカイから降り注ぐ陽光がきらめくそこに反響するのは、靴裏がたてるアップテンポの歌声と軽やかで短い米国英語だ。ところどころ聞きとれない発音や単語はスラングなのだろう、隣り合うカナダが苦笑しているところから、若者特有の他愛のない、俗な言葉に違いない。
光とつかの間の熱気に包まれた世界を彩るのは甲高く軋り鳴くラバーソール、弾丸のように投げ交わされる荒い声、コート周囲からの歓声や口笛、陽光を受けて光の雫の様に散る汗やボールの跳音に身体がぶつかり合う音、そして。

「わぁ、アメリカすごいなぁ」
「そー、ねぇ」

ガァン!と鉄製のゴールリングが派手に鳴る。
片手で掴んだバスケットボール、全身の筋肉をしならせて空中での体勢を見事にコントロールし、無数の視線を引き連れて豪快なダンクシュートを決めた青年は、片手でリングに暫く掴まったまま身体を揺らしながら己を称える歓声に軽やかに笑って応えてみせた。
なんというか、絵に描いたように爽やかな光景だ。室内の題名がアンニュイならば戸外の此れは『爽快』だとか『躍動』だとかつけてもよさそう、と埒もないことを思う。
‥‥と、同時に。

「‥‥なんていうか、あれ、あの子気づかないわけ?あれ天然??」
「あはは」

これまた隣りから返されたのは天使の軽やかさの笑い声だったけれど、そこにいろいろ含んだものを感じ取れたのは気のせいではないだろう。
フランスの可愛い可愛い元・養い子は、可愛い姿のままに可愛いだけじゃない何かをしっかり身につけた青年に育っていた。
少なくとも、今バスケットコートで様々の賞賛を受けつつそこに意味ありげな、結構あからさまに含んだ視線や身体的接触を欠片も読み取らず実に美味しそうに、否、爽やかに笑っている、姿の良く似た兄弟に較べれば。
肌の色も体格も様々な若者達はつかの間の遊びを存分に楽しんだのだろう、知り合っていくらも経たない相手にも臆することなく互いの健闘を称えあい、快活に言葉を交したり拳や身体をぶつけ合ったりしている。少し荒っぽいくらいがあの年齢の流儀であり、いちいちアクションが大きく情熱的なのはこの国らしい大らかさ、と言えなくはない、けれども。
みっしりといかにも密度の高い筋肉を無理やりシャツの中に押し込んだような大柄な青年が、ゲームのヒーローである金髪の青年を抱き締める。はやし立てる周囲に抱擁された青年は苦笑交じりに笑い、抱き締めてくる『友人』の胸を拳で叩いた。

「あ、キスされた」
「あー‥‥」

さすがにキスには参ったのか、なおもじゃれかかる『友人』とはやし立てる周囲に何事かを笑い混じりに喚いてみせた後、男の腕の中から脱出した青年は、着崩れたシャツの裾を握りこむようにして軽くはためかせた。抱擁よりも身体を動かしたことで身体に熱が篭っていたのだろう、シャツの下へ風を送り込むように襟や裾をくつろげて軽く肌をさらしつつ、大きく息をついてから汗を拭う。‥‥あらゆる意味で、視線を釘付けにしながら。

「‥‥題名は『焦恋』とかかなぁ」
「『誘惑』じゃないですか?」
「お前も言うね」
「あとは『無自覚迷惑恋泥棒(笑)』とか」
「ええと、カナダさん?怒ってらっしゃいますかー?」
「いいえ?」

釘付けにされたチラリズムから視線を隣りの可愛い天使へ向ければ、目に麗しい可愛くも美しい微笑が返されたけれど、フランスはなんとなく視線を逸らした。‥‥いやいやいや怖かったとかそういうことじゃないよ、と内心で誰にともなく弁解などしてみる。

「アイツねぇ、本当、その嗜好の相手にかなりモテるんですよね」
「あー‥‥」

肯定とも否定ともつかない、なんとも曖昧な相づちを打ったフランスである。
可愛いフランスの元・養い子の発言は真実で、彼の兄弟であるところの魅力的な青年たるアメリカは、どうやら同性にも実に魅力的にうつるらしい。あけすけにいえば性的な意味合いでのアプローチをかけられることも珍しくない。と、いうのがフランスの認識というか見解というか、である。
実際問題、今日に限らず似たような光景は、長い長い付き合いの中で文字通り数え切れないほどに見かけてきた。

「まぁ、解らんでもないけどねー」

ため息のように零す言葉は真実。
アメリカは、実に魅力的な青年だ。

どこか肝の据わった豪胆さは、自分達の特殊な生を理由に出来なくはないけれど、そもそもの彼の気質なのだろう。快活でありながらどこか野生的、それで居てアメリカ合衆国という大国の大都市にも溶け込む洗練されたシャープさも持ち合わせている。
生来の白肌は兄弟である北の隣国と同様の肌理細やかなものだが、カナダが優雅さの一つとして持ち合わせているのに比べて自然な日焼けで程よい赤みを帯びることでなよやかさを払拭し、今でこそこの国のトップの傍にあり政治の中枢に居るものの、かつて戦場の最前線に立っていた往時の気配もまた、健在。軍属にあったもの特有の無駄のない動きが、程よく鍛えられた身体をよりいっそう滑らかにみせる。
そしてあの、性格。若者らしい快活に溢れたはじけるような笑顔、人懐こく友好的で気安い性格に適度な男っぽさ、同時にどこか夢見がちなあどけないとさえいえる、可愛さ。

「‥‥天然ていうか、鈍感ていうか」
「彼らいわく、その無垢(笑)なところがいいそうですよ」
「カッコワライとか止めてあげて!なんかお兄さんも切ないわ!」

反射のような半畳には言葉は返されなかった。
フランスは尚も、窓向こうの光景を眺めながらぼんやりと考える。
‥‥そう、解らない、わけがないのだ。
何故ならフランスは愛の国であるし、愛とは美しく素晴らしく柔らかく、時として嵐のごとく情熱的に若者を攫うものだと、知っている。

「‥‥まぁね、美味しそうだよねぇ」

輝く太陽の下、なおも恋情を絡めた視線を受けている青年を眺めながら零したフランスに、変わらぬ天使の穏やかさをした声で、返された言葉ときたら。

「美味しそうって、そんな。フランスさんてば彼が美味しいの知ってるくせに」

ふいた。

すごいね俺、気体を固形物並みに喉に詰まらせるなんて器用だねさすが世界のお兄さん!‥‥ではなく。

「‥‥‥‥ええと、カナダさーん?怒っていらっしゃいますかー?」
「いいえ?」

もう怖くないとか内心でさえ弁解も出来ず、視線を遣らないままの呟きめいた確認に、返されるのは変わらぬ天使の穏やかさ。
ああ、フランスの可愛い可愛い元・養い子はどこまでも可愛らしく、そうしてきっちりとフランスの血を引いた愛を知る男に育ってくれたらしい。
フランスが視線を窓の外へと固定している間にも、はふぅ、と可愛らしいため息が零され、おっとりと愛らしい声がフランスの耳をくすぐりにくる。

「僕の兄弟はね、本当に可愛いから。もう、いつも見てて危なっかしいというか?まぁ、僕とかイギリスさんが傍に居るときならね、いいんですけど」
「‥‥はぁ」
「でも、ほら。僕達だっていつも傍に居られるわけじゃないじゃないですか?僕は確かに隣国で、一番近くに居るけれど一緒に住んでるわけじゃないし、イギリスさんなんて海を隔ててるのにそれどういう魔法ですかみたいな神出鬼没さ加減ですけど、それでもずっとは一緒に居られませんし」
「‥‥そーですね」
「で、その一緒に居られない間に、なんだかお髭の伊達男さんに食われちゃってたりとか、本当にもう我が兄弟ながら心配で心配で堪らないっていうか?」
「‥‥‥‥ソーデスネ。」
「あははフランスさん、片言になってますよ」

おっとりほにゃりとした快活な笑いが、フランスの耳を優しくくすぐる。
きっと今横を向いたならば、バスケットコートで尚もきらきらしい笑顔を振りまいている、己の恋人である可愛い青年にも負けずとも劣らない、それはそれは美々しい天使の微笑が見れたのだろうな、とフランスは思ったものだ。思っただけで、向けやしなかったわけだが。




愛の国たる己が必死で真剣に口説き落とした可愛い青年は実に魅力的で、これまでもこれからも今現在目の前で繰り広げられている光景のように、様々な相手を魅了しつつ無自覚なまま笑ったりとか、そういう相手で。
アメリカの兄弟であり常に傍にあるカナダが、嘗て幼い彼を溺愛しつくした元兄であるイギリスが、それぞれアプローチは違えども影に日向にアメリカを、そういう意味で守っていたのも知って、その上で、恋をした、愛しい恋人で。
‥‥ああ、そうだ。
本来「愛の国である」フランスは、きっと今太陽の下を満たしている愛を含んだ視線や柔らかく潤んだ恋情を、祝福しなければならない。
恋愛とは、愛とは。素晴らしく柔らかな、時として嵐のごとき情熱的な情動で、フランスが愛して止まないもの。
恋をする若者は美しく、きらめく太陽の下に広がる光景は祝福すべきもの。なのだ、けれど。




「‥‥そーねぇ。うん、まぁ食っちゃった責任と申しますか、その、若者の恋愛は美しいわけですが、お兄さんとしてはそれは、」
「はっきり、簡潔に」
「嫉妬しましたキスとかふざけんなコラ」
「よく出来ました。‥‥アルフレッド!」

伸びやかな兄弟の声に、尚も爽やかで可愛らしい笑顔を振りまきつつ何事かを話していた青年が振り返る。
晴れ渡るブルースカイにも似た真っ青な瞳は窓辺に立つ兄弟の姿を映すや輝くような笑顔を浮かべて、大きく手を振った。

「なんだい、マット!」

朗々とコートに響く声は伸びやかでどこか甘いものを含んでいて、それに反応した『友人』達の視線が一斉にカナダへと向けられた。
生来おっとりほにゃりとしたカナダは、けれどその視線に含まれる全てを感心するほど綺麗に受け止め、視線一つでものの見事に一から十まで受け流すと、指先だけで再びアメリカを呼び寄せる。
周囲に一言、二言なにごとか断ってから此方へと足を向けたアメリカの姿を捉えつつ、フランスは隣に立って清楚に笑う元・養い子へと呆れにも似た視線を送ったものだ。

「‥‥お前は、あれだねぇ誰に似たのかな」
「貴方じゃないですか?」
「ああ、うん‥‥」

視線をアメリカへと向けたまましれっと寄越された回答に、フランスは苦笑する。
そうこうしている間に窓の下まで駆け寄ってきたアメリカが、己を呼んだ兄弟に甘い笑みで語りかける。隣に立つフランスには目もくれない。

「なんだい?カナダ。君も参加するかい?たまには身体を動かしたほうがいいんだぞ!」
「そうじゃなくて。ほら、そろそろ車の手配がついたころじゃないのかい?部下の人に訊きにいったほうがいいんじゃないかなぁ」
「‥‥あ、そうか。そうだね!」

ぱちぱちと綺麗なブルーアイズを瞬かせて兄弟の言を聞き入れたアメリカは、身体を動かしたりなかったのか一瞬名残惜しそうに眉を寄せたけれど、すぐににっこりと兄弟に笑みを向けると快活な声で頷いた。
その笑顔を写し取ったかのように、やはり笑顔になったカナダが窓から少し身体を乗り出すようにして、アメリカへと顔を寄せる。ごく自然な動作でアメリカも同じく少し身体を寄せて、良く似た面差しの二人の頬が一度だけ、たふ、と触れ合った。
頬を寄せると同時掲げた手のひらを一度、それから拳を作って二度。彼らだけに通じる合図のように手のひらで会話をした二人は、いっそキスを交すより親しげな雰囲気を醸して笑いあう。

「アメリカ、入り口に回るのが面倒だろう?僕が聞いてきてあげるよ」
「いいのかい?サンキュー!」
「うん。‥‥それじゃ」

変わらぬ天使の微笑を湛えたカナダは、台詞の最後だけをフランスへと渡して身を翻す。
少しおっとりとした足取りは、嘗てフランスが彼を抱き上げあやしていた頃と殆ど変わらない。けれど同時に凛と伸びやかな後姿は、すっかりと一人前に成長した青年らしい凛然とした雰囲気で、フランスは暫しその後姿を視線で追った。

「‥‥フランス」

どこか低められた、恋人の呼び声を聞くまでは。

「なぁに仔猫ちゃん?お兄さん悪いけどバスケットとか無理だよー」
「おっさんには頼まないよ、無理させて筋肉痛です会議はストライキとか言われても困るし」
「ちょッ、お兄さんはまだお兄さんです!ぴちぴちです!」
「ああ、自己申告は当てにならないっていう典型だね、勉強になったよ」
「ああもーお前ら兄弟本当容赦ないよね!」

わっと泣き伏すように窓の桟に突っ伏したフランスに、アメリカは軽く肩をすくめただけだった。つれないなぁ、と伏せたまま苦笑したフランスもまた、内心で肩をすくめる。
チラリと視線を上げれば、何故だか面白くなさそうな顔で立つ、恋人の姿。
その向こうには、今だちらちらと此方を眺めている若者達の、姿。

『本当にもう心配で心配で堪らないって言うか?』

おっとりとしつつ、どこかひやりとフランスの心を撫でたカナダの声が脳裏にこだます。

アメリカは、実に魅力的な青年だ。 快活で磊落な性格、適度に引き締まった身体、人懐こくてフレンドリー。多くの人間が彼に好感を持ち、そのうちのいくらかは彼を恋愛対象としてターゲッティングする。
だからこそ彼の隣国たる兄弟も独立という決別を果たした後も彼を構い続ける元兄もアメリカの傍に居て、ある意味でアメリカを守ってきた。大切な、大好きな彼が、傷つかないように。彼がいつも、笑っていられるように。
なんていうか、愛されてるなぁ。なんて。しみじみ思う。
フランスは「愛の国」だ。愛とは美しく素晴らしく柔らかに、心を包み温める。
フランスが愛する恋人は、その兄弟や元兄にありったけ愛されてここに居る。なんていうか、それは、とても。

「‥‥フランス」
「なぁに?」
「君、ちょっとカナダにくっつきすぎなんだぞ。そういう、のは、俺は認められない」
「‥‥へ?」




‥‥それは、とても。




「ッ、だから!その、ステディな相手がいる身でッ、ていうか眼前で身体に触るとかそういうのはマナーがなってないって、俺が見てるところでそういうの、は‥‥ッ?!」

ちぅ。と少しかさつく唇を吸う。
肩越しに見える若者達の視線に、フランスは視線だけで笑う。

「ああ、お前本当愛されてるよねぇ。まぁ一番愛してるのは俺だけどね!」
「は?!ちょ、君なに言って‥‥っ、ていうかなにしてくれるんだい?!」
「はいはいはーい。もういいからとっととこっち来な、遊んでないで。そろそろ本当移動だぞ?」
「う、」

軽く身体を横に引いてアメリカの視界に室内を移してやれば、眠るイタリアを揺り起こそうとしているドイツや、やはり和やかなんだか険悪なんだかぱっと見解らない大小の隣国同士が壁に掛けられた時計を見上げている。
そして、部屋の奥からはやはりおっとりとした足取りのカナダと、微妙に不機嫌そうに主張の強い眉をしかめたイギリスが此方へと歩いてきていた。
それらを見て取ったアメリカは、尚も何事かを言いたそうにキスを交したばかりの唇をもぞもぞと動かしたけれど、結局何も言わずに身を翻した。玄関に回るのだろう。大きなストライドで歩きながら一度だけコートに向かって手を振って、つかの間の友人達へのお別れの挨拶としたようだ。コートではにこやかに笑うもの、肩をすくめて苦笑するものや、どうやら本気で肩を落とす男もいたようだけれど、それ以上のものはない。彼らは若く情熱的で善良で、またきっと素晴らしい出会いと恋が、待っている。

「愛の国から、祝福を。‥‥アイツに目をつけるのはなかなかの選択眼よ?」

一部始終を見届けたフランスは、大きく伸びをしながら恋人の地に住まう若者達へ祝福を送る。

「けれどあの子はあげらんないよ。」

兄弟や兄にありったけ愛されてきた彼は、「愛の国」たるフランスが愛を捧げる相手として見定めた相手。
世界でもっとも美しく素晴らしく柔らかな愛を注いで、世界でもっとも幸せにしてみせるから、

「ご心配なさらず。」

なんてね。
誰にともなく誓ったフランスは、可愛らしく頬を染めて戻ってくるであろう恋人のために、愛に溢れた笑みをその口元に刻んだものだ。









「そろそろお兄さんもちゃんとあの子捕まえとかなくちゃねー。ていうかアイツ本当モテモテだよねぇ、いや本当カナの心配もわかるわ」
「でしょう?まぁともかく、お願いしますよ。もういい加減心配するの疲れるんだから。アメリカに何かあったらイギリスさんが泣いちゃうんでちゃんと掴まえててくださいね」
「そうねー、イギリスが鳴くのはお前の腕の中だけでいいんだもんねー?」
「‥‥フランスさん?冗談もほどほどにしとかないとビーム出しますよ?カナディアン的な何か」
「ビーム出せんの?!止めてそんなとこだけ眉毛に似ないでぇ!!」









ニューヨーク・ロマンチカ





end.(2011.03.20)

お姫様ポジションのメリカが最近のブームです^q^