[Fotokina]

















写真立てをあげた。

縁が厚くて、綺麗なもの。
何故此れを彼にあげようと思ったのだろう。
なんとなく、かな?

雑貨を見て歩いているときに、なんとなく目に止まって、誘われるように買ってしまった。
その時一緒にいた三上には、役に立たねェもん買ってんな、なんて言われたっけ。

確かに。

写真立てって、使うようで使わない。

写真はある。たくさん。
両親は写真好きで、子どもの頃から今まで
色々な場面の様々な写真が年毎にアルバムに
整理されている。
実家にはいくつかの家族写真が額やフォトフレームに収められて飾ってあるけれど。
それは家族のものであって、俺のものではない。
考えてみれば俺は、写真立てに写真をいれて飾ったことがなかった。

なのに買ってしまった、写真立て。

白いフレームに、青味を帯びた硝子。
シックで、あまりごてごてしていなくて。
趣味は悪くない。と、思う。
だが、使わないでは意味が無い。
三上に笑われるのも道理だ。
何故俺はこれを買おうと思ったのだろう。

白いフレーム。青味を帯びて、硬質な光を放つ。
凛とした青。
鮮烈な白。

前を向き。何者にも染まらず、交わらず。
独り、起つ。

孤高の、彼。



























「‥‥‥‥‥‥‥‥ああ、なるほどね。」

「あぁん?何か言ったか、渋沢。」

「いや、なんでも‥‥‥‥。」

「気になるじゃねぇか、言えよ。」

「いや、三上は聞いてもあんまり面白くないことだよ、きっと。」

「んなこたぁ自分で決める。聞かねぇ方が気になるだろうが。
オラ、さくさくと吐きな。」

「じゃ、言うけど。‥‥‥‥似てるなぁ、って。」

「何が。主語と目的語をいえ。主語と目的語。」

「今日買った写真立てが、」

「が?」

「不破君に。」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥なんだと?」

「何で買ったのか、自分でもよく解らなかったんだけど。
なんとなくね、不破君のイメージだったんだ。」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」

「硬質な感じのする瑠璃硝子とか、白いフレームとか。
孤高のヒト、ってイメージじゃない?なんか。」

「‥‥‥‥くっだんねェこと聴かすんじゃねェよ!!
知ったことかンなことーッッ!!!」

「‥‥だから聞いても面白くないって言ったのに‥‥。」



























白、という色は俺の中での彼のイメージだ。
彼は黒を好んで身に纏うし、真っ黒なさらさらした髪をしているから、
なんとなく最初は黒が彼のイメージだったのだけど。

けれど、彼は白だ。

何ものにも染まらない、純色。
全ての光原色を内包した、光の色。

全てを拒み、全てを吸収するその色、その生き方。
魅了されて止まない、孤高の人。

それに似ていると思ったのだ、その写真立てが。
まぁ、後から思ったことなんだけどね。
買ったときは、本当つられるように買ってしまったから。




あげるよ、と言って渡したら、ちょっと困った風な顔をして。
何故とその理由を問うてきた。
答えなかったけど。

ただ、飾っていて欲しかったから。君の傍に。

自分で持っていても良かったのだけれど、なんとなく彼にあげようと思った。

それが俺の選んだ君の印象。

もしもそれを見る度に君が俺を思い出してくれたなら いいのに。

‥‥‥‥無理だろうなぁ。

彼はあれをどうするのだろう?
飾ってくれるだろうか。
‥‥そこらへんに放られてたらちょっと哀しいかなぁ。
それは無いと思うけど。

何度か訪れた彼の部屋は、俺には不思議な空間だった。
壁に沿って埋められた本棚一杯の本。
分野はまちまちで、中には俺の知らない言語の本も置かれていた。
最低限の家具と、部屋の隅に、ワークステーションと言ってもいいだろう、OA機器類。
殺風景な場所だった。
けれど、それは彼にこの上もなく似合ってもいた。

あの部屋の、何処にあれを、彼は置いてくれるのだろう。


‥‥‥‥中に、誰の写真を飾るのだろう。


出来れば、何の写真も入れないで欲しい。
入れられた写真が何であれ誰であれ、

きっと俺は嫉妬するから。
君の内側に居る人に。

だから、誰の写真も入れないで。






















「渋沢」





















「お前の写真が欲しいのだが。」





















さすがに、自分には嫉妬しないけれど。




[Fotokina]
version : katsurou SHIBUSAWA