[Fotokina]
写真が好きだった。
撮るのも、撮られるのも。
だからいつもと言っていいくらい
使い捨てカメラをもってたりした。
クラスで、部活で、寮で。
パチリパチリと、シャッターを切った。
クラスメイトの、先輩の、後輩たちの色々な表情が、
そこには時を止められて存在した。
笑ったり、怒ってたり、呆れていたり。
くるくる変わる感情の嵐が、数センチの紙片になって永遠に其処に在りつづける。
撮った写真はまとめて紙袋に突っ込んである。
あんまり丁寧な性格じゃないからね。
自分の写っていない写真は欲しいと言う奴にあげた。
ワリと皆、撮ってる時は嫌がったりするくせに、
後になって欲しいって言う人、結構いるんだ。
そういうの、嫌いじゃない。
自分と同じ時間を過ごした奴が、その止められた瞬間を
ずっと覚えててくれるのかなって思ったら、嬉しかったから。
写真が好きだった。
俺の机の上には、そんな風に撮った写真のうち、
気に入ったのがいくつか飾られていた。
コルクボードにピンで留めてるだけだけどさ。
部屋に遊びにきた三上先輩がそれを見て
マメなヤツ〜とかいって笑った。
何で俺の写真がねェんだよ、とかいって俺のほっぺたぎりぎり引っ張ってくれたけど。
撮るといつも怒ったくせに、そんなこと言われたって
困るって先輩。
「いひゃいひゃい、いひゃいですってバッ!
三上先輩〜!!」
「うるせー。笠井も渋沢も辰巳の写真もあるのに、俺だけねェのはなんかムカつくんだよ。」
「だって、三上先輩カメラ向けるといっつも怒ったじゃないですか〜ッ」
「当たり前だ、軽軽しく肖像権を侵害されてたまるか。」
「‥‥先輩言ってること矛盾してますよぅ。」
「ウルサイ。」
「なんなら今から撮りますか〜?ほら、お見合い写真みたいなウソクサイサワヤカ写真とか!
若いうちが花ですよっ先輩!!」
「バーカ。‥‥‥‥大体お前、写真撮るの止めたんだろうが。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥え、」
「無理してんじゃねぇよ。」
「‥‥‥‥‥‥先輩?」
薄っぺらい閉じられた時間の上に、涙が、落ちた。
写真が好きだった。
撮るのも、撮られるのも。
其処には楽しい時間が止まってるから。
大好きな奴が、其処に居るから。
キャプテンのところに遊びにきていたアイツを掴まえて
写真をとった。
アイツの写真が欲しかった。
だって、いつも一緒に居られるわけじゃないから。
学校が違えば、いつも会うのは難しい。
電話したり、押しかけるように遊びに行ったりもしたけれど。
全然足りない。
もっともっともっと、一緒に居たかった。
ずっと一緒に居たかった。
でもそれは無理だから。
だから、アイツの写真が欲しかった。
一枚だけ一緒に撮った写真。
それで充分だった。
不破の視線が、誰に向いているのかを悟るには、
たった一枚で、充分だった。
ぱたりぱたりと、涙が零れた。
三上先輩の手が、ぽすぽすと頭を叩いてくる。
泣いちまえ、と言う声はいつもどおりの不機嫌さを備えていて。
先輩の手はあったかかった。
先輩は優しい人だ。
写真が好きだった。
不破が大好きだった。
もう二度と、
写真は撮らないと、誓った。
[Fotokina]
version : seiji FUJISHIRO