冷たく優しい。















「三上は、卒業式に泣いたか?」
「はぁ?」

いつもいつも唐突で突拍子もない質問を投げかけてくる不破にも慣れたと思っていた三上だったが、質問を投げられるのに慣れるのと、質問に応えを返すことに慣れるのとではまた別物だ、と思う。

「バカか。なんで泣かなきゃいけねーんだよ。」
「泣いてないのか。」
「ッたり前だっつの。」

至極真面目に確認を取ってくる不破の頭を軽く小突く。痛い、とちっとも痛そうじゃなく訴えてくる小さな声は、吸い付くだけのキスで黙らせた。
赤くなった目元と逸らされた視線が、ひどく可愛くて笑いたくなる。
目線を外に逃がして、そうか泣いてないのか‥‥と小声で呟いている不破の頭を抱えるようにして抱き寄せた。

「‥‥で?今度は一体誰からどんな入れ知恵をされたんだ?」

不破の質問の大半は、他人から教わった情報の確認、実証な場合が多い。
書物から取り入れた知識や疑問について質問してくる事は無い。文章情報は同じ文章情報により解決されるものだと思っているからだ。
というわけで、質問の内容は友人やクラスメイトから仕入れたものばかりなのだが。
‥‥問題は、大概その情報とやらが、故意に歪められているというか、要するに不破をからかって遊んでいる内容ばかりな事だ。

「藤村が。」

‥‥‥‥またアイツか‥‥。
三上は心の中でため息をつく。

「藤村が?」
「卒業式で泣かないと、冷たい人と言われる、と言っていたから。」
「‥‥‥‥。ああそぅ。」

‥‥それは、古い歌の一節で。
きっと、卒業式がどうのという話が出たときにでも、藤村が言ったのだろう。きっと楽しくって仕方がないと言わんばかりの笑みを浮かべていたに違いない。

うっかり頭の中に、藤村がしたり顔で不破に講釈を垂れている場面を想像してしまい、三上は抱き込んだ不破の頭の上で盛大にため息をついた。

「あー‥‥ハイハイ。泣かなかったのは俺が冷たい人だからってので、もういいよ‥‥。」

アレコレと説明するのも億劫で、三上は半分投げ遣りにそう言った。‥‥のだが。

「よくない。」
「は?」
「ちっともよくないぞ三上。」
「な、何が?」

不破は勢いよく、抱き込んでいた三上の腕から抜け出たかと思うと、今度は自ら抱きつく‥‥というよりも三上の胸倉を掴み寄せるようにして、三上に顔を寄せてきた。

そして。

「三上は冷たくないのに。皆に、冷たい人と言われるのは嫌だ。」




‥‥いつもいつも唐突で突拍子もない質問投げかけてくる不破の、こういう唐突な素直さが、可愛くてたまらないと、思っていたり。




クツクツと三上は肩を震わせて笑う。
笑う三上に、不破は眉を顰めて不機嫌顔。

「‥‥バーカ、いいんだよ、別に冷たいって言われても。」
「だって、お前はいつも優しいぞ。冷たくない。」
「だから。誰に何言われても、」

三上は笑いながら、己のシャツの胸元を掴んでいた不機嫌顔な恋人の手を、上から握りこんで。

「お前が知ってりゃ、それだけで良いんだよ。」

三上が優しいことも。
三上が不破を好きなことも。

「お前だけが、知ってればいいんだ。」

そう告げて、一瞬で頬を赤くした可愛い恋人に、三上は涙を見せる代わりに、優しい笑顔とあたたかいキスを、贈ったのだった。






end.(03.29/2002)
実は三不破まつりの一環だったり。

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