『運命は斯くの如く扉を叩く』















それは、有名な古典楽曲の通り名のもとになった、作曲家の言だが。

「あれは、嘘だ。」
「ああそぉ。」

その妙なくらいにキッパリハッキリ断言口調のそれは、きっと其処が、二人シーツに包まった三上の腕の中じゃなかったなら、腕組みに仁王立ちでもして宣言されてそうな、そんな感じだった。

普段から不破の口調は、確信に満ちた押しの強いものだが、それにしたって‥‥と、三上は眠い頭で、少々思わなくもない。

布一枚の隔てもなく抱き合ったままの身体は、未だ先刻の名残を残して、しっとりと吸い付いてくるような手触りで。
胸元に抱き込んだその人の首元に目を落とせば、紛れもなく己が先ほどつけた赤い印がくっきりと浮かんでいるし。
己の肩に目をやれば、体内を穿つ衝撃に、涙と甘い喘ぎ声を流しながらしがみ付いてきた爪あとも、鮮やかに残っているというのに。

「コラ、三上、聞いてるか?」
「聞いてマス聞いてマス。」

おざなりな三上の相づちに、身を捩って見上げてくるその瞳も、まだ余韻に潤んでいるというのに。

「‥‥聞いてるけど、お前、色気がなさすぎな会話をどうにかしろ。」

いや、別に甘いピロートークとか睦言とかを吐けって言ってるわけじゃないけれど。
そうされたらされたで今度は呑気に寝る気が失せて困るのだけれど。

己の言に心の中でツッコミを入れつつ、三上はため息をついたものだ。
そのため息に、不破は少しだけ不機嫌そうな視線を送ったのだが、三上は気にせずにもう一度腕の中の身体を、寝るのに良いように抱き直すと、もういいから寝ろ。と不破の背中を撫でた、のだが。

「三上。」
「‥‥んだよ、もう寝ろって‥‥。」
「運命はあのような音はしないぞ。」
「ハイハイ‥‥。」
「だって、」




「俺が三上と会った時に、あんな音はしなかったぞ。」




トントン、と頑是無い子供をあやすようにその背中を撫でていた、三上の腕をとめるには、充分過ぎる発言で。

「やはり運命は、あのような音は、立てないのだ。」
「‥‥‥‥‥‥。」
「だ、から‥‥。あれは、嘘、なのだ‥‥、」

いうだけ言って満足したのか、意識を沈ませていくように途切れがちになる不破の言葉に。
三上は盛大に、それはそれは深いため息をついて。

「‥‥不破。」
「‥‥‥‥‥‥。」
「‥‥‥大地!起きろッ、あー、もーっ。」
「‥‥、三上、眠いぞ‥‥。」
「アホ、こっちは眠気が吹き飛んだっつの。‥‥ちょっとつき合え。」
「‥‥‥‥ッぅン、な、何‥‥!‥‥コラッ、みか‥‥ァッ」




甘い喘ぎ声と、シーツの衣擦れの音と。

運命がどんな音かって、こんな音だよと不破に言ったら、きっと怒るだろうなと、益体も無い事を考えつつ。
三上はその甘い身体を堪能すべく、しがみ付いてくるその腕に、優しいキスを、落とした。






end.(03.29/2002)
三不破強化期間?

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