ある愛のうた。12
本日の松葉寮食堂の夕食ににんじんが出されました。
「ほら藤代、きちんと人参も食べろ。」
「ヤです。」
「藤代。」
「いやです!幾らキャプテンの命令でもきけないものはきけません!!」
「人参に含まれるカロチンは身体の恒常性を‥‥」
「あああっ!ニンジンの講釈効能なんて聴きたくありませんーッ!!もうっ、俺は将来ニンジンのない世界ではばたくんですからノープロブレム!モウマンタイ!!ほっといてください!!」
「嫌いだからといって逃げるのは如何なものかとおもうぞ?」
「逃げるが勝ちって言葉くらい俺だって知ってるっすよ!」
「‥‥あれー?なに藤代、またにんじん残して怒られてんの?」
「中西か。もう食事は済んだのか?」
「んー。これからアキと宿題でーす。部屋借りるね。」
「ああ。」
「中西センパイってば俺怒られてるんじゃないっす!己の存在意義を賭した勝負の途中なんですっ。」
「イミ解んないし藤代。ってかにんじんくらいガッと口入れてグッと飲み込めばいいでしょうに。」
「それが出来ないから『嫌いなもの・ニンジン』ってプロフィールにあげてるんじゃないですかー!センパイだって、嫌いなものの一つや二つくらいあるでしょ?!」
「嫌いなモンねぇ‥‥。んー、あるっけな?」
「そういえば中西が何か嫌っているというところを俺も見たことがないな‥‥。何かあるのか?」
「んー?‥‥あ、あったあった。数学嫌い。」
「数学‥‥は食べ物じゃないけど、ほらやっぱりセンパイにだって好き嫌いあるじゃ‥‥!」
「この前の実力考査、98点だったんだよねー。絶対100いけると思ったんだけど。証明問題嫌い。」
「ひゃ‥‥くてん?!」
「証明間違えるたびにアキに『詰めが甘ェんだよ。』って言われるんだけど。もー、いっつも勝てないんだよな、もうちょっと勉強しようかね‥‥。」
「まぁ学究が学生の本分だが‥‥。この前の考査って、平均38で数学教師激怒させたやつだろう?」
「‥‥‥‥いつも勝てない、ってことは三上センパイは99点か、満点‥‥。」
「アイツは99。っつーか99ってあたりアキの方がよっぽど詰めが甘いじゃんねぇ?」
「‥‥‥。他にッ、他には何かないんですか?!嫌いなモノ!」
「んー‥‥‥‥。あ。あった。」
「何です?!」
「くらげ。」
「くらげ、というと‥‥あの、海にふよふよ浮いてるあれっスか?」
「そぉ。あのなんともいえない存在感の薄さが駄目だねぇ。」
「わりと普通なものだな。」←こっそり失礼ですキャプテン。
「昔さぁ、『驚愕!これが火星人の姿だ!』とかって、なんかくらげ大きくしたような生物(?)の絵とかあっただろ?あれとか見るともう駄目だったね。」
「へー、中西センパイも人の子だったんですね‥‥ってそうじゃなくて!ほらキャプテン、そんな(←どんなだ)中西センパイにだって嫌いなものがあるんですから俺がニンジンから逃げても大して問題な‥‥、」
「あの絵見るたび『将来火星に行って火星人を殲滅させてやる。』って誓ったもんだよ。」
「「え゛。」」
「やだなそんな驚かなくても。今は思ってないってー、火星人があんなカタチしてるなんて。幼い頃の可愛い過ち。」
「‥‥や、あの、そ、そうではなくて‥‥。」
「‥‥‥‥‥‥。」
「まぁ居ないとも言い切れないから誓いは捨ててないけどね‥‥。」
「!!!!!いいいい今小声で何か言いませんでしたかセンパイ?!」
「え?いやー?別にー?」
「中西、何やってんだよ、宿題‥‥、って渋沢と藤代。」
「三上。」
「‥‥センパイ。」
「ごめんごめん、ちょっと二人と話しこんでたから。」
「話?」
「俺がくらげ嫌いだって話。」
「ああ‥‥そういえばお前くらげ昔から嫌いだったよな。よく海とか行ってクラゲ見つけては怖がって抱きついてきたよなー。」
「「‥‥‥‥‥‥。」」
「だってクラゲ嫌いだし。」
「まぁいいけど。ほら、宿題。プリントの応用4の解答ってさぁ‥‥。」
「ああ、あれはねぇ‥‥て、そうだ藤代?」
「は、はいッ?!」
「嫌いなものから逃げてちゃだめだよーぉ?」(笑顔)
「「‥‥‥‥‥‥。」」
「‥‥藤代、ニンジン、食べような?」
「‥‥‥‥ハイ。」
好き嫌いは、なくしましょう。(今週の標語/階段長・辰巳良平案)
完!
■アトガキ。(06.17/2002)
嫌いなものを見たときの反応ってふたつあると思うんですが。
自分が去るか、相手を去らすか。
ちなみに私、中西思考。(え。)
ところで中西、『秀二』か『秀仁』か、どっちなのか。
この期に及んでの誤植は勘弁してよ、集○社‥‥。
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