ある愛のうた。14
名門武蔵森、松葉寮。
今日も今日とて平和な日常。
「チョコバナナが食べたい。」
「は?」
「だからー、チョコバナナ。知んねェのオマエ?こう、剥いたバナナに割り箸さしてー、」
「‥‥チョコレートかけて冷やしたもの、だろう?それは知っているが‥‥。」
「じゃぁいいじゃん。食べたい。」
「‥‥それは、暗に俺に作ってこいと要求しているのか、三上?」
「なんだ、遠回しじゃ駄目なのかよ?それじゃ『食いたいから作ってこい、渋沢』。これでどーよ?」
「‥‥‥‥。どうよと言われても‥‥。」
「妥協してバナナだけでもいいぜ。‥‥ンだよ、司令塔の要求がきけないっての、ウチの守護神サマは?パスまわしてやんねーぞ、コラ。」
「や、GKにパスを回したら駄目だろう三上。‥‥それにしても、随分唐突だな。」
「んー?なんつーか、急に食いたくなった。」
「甘いの、平気になったのか?」
「フルーツの甘みじゃん?それに、バナナは昔っから大丈夫。」
「うん?そうなのか。‥‥ああ、そういえば食べてたよな、部活中のカロリー補給用食餌」
「おぅ。‥‥っつかさぁ、俺レモンの砂糖漬けとかよりバナナのがいいんだけど。なんで変わったんだよ、アレ。」
「そういえば、暫く前からバナナじゃなくなったな。理由は知らんが。」
「砂糖漬けって甘すぎんだよ‥‥。気分悪くなるっつーの。」
「藤代なんかは『甘くて美味いッス!』とか言って喜んでるみたいだけど。」
「それがそもそもムカつくんだよ!!こっちだって腹減ってるっつーのにあのバカ、目の前で食いやがって‥‥!!おまけに食わそうとするしっ。」
「ははは、三上の場合、悪くなるのは気分じゃなくて機嫌のようだな。」
「うっせーよ、渋沢、キャプテン権限でなんとかしろ。」
「なんとかと言われてもな。」
「笠井だってバナナのほうがいい、みたいなこと言ってたぜ?」
「笠井がか?あぁ、そういえば一緒にバナナをよく食べていたようだが‥‥。めずらしいな、誰かさんと違ってあまりこういうことに注文をつけるほうじゃないのに。」
「‥‥‥‥うるせーっつの!悪かったなぁ注文つけまくりでっ!バナナがいい!いいったらいいんだ!!」
「はいはい、まぁ、適当な理由つけてコーチには伝えておくよ。司令塔の気分と機嫌が悪くては話にならないからな。」
「けッ、当然だろ。‥‥で?」
「え?」
「チョコバナナ。今は。」
「ああ。‥‥わかったわかった、作ってくるから。」
「よし。」
「これ以上三上の機嫌を悪くして暴れられても困るし。寮内で犯罪ははいただけない。」
「‥‥いますぐ暴れてやってもいいんだぜ?」
「短気だな、糖分が足りてないのか?美味いの作ってくるから事件は避け‥‥、」
「あれーっ?キャプテンてばなんか作るんスか?!ご飯ですかおやつですか?!俺も食べたいッス!!」
「ちょっと誠二ってば、先輩の部屋なんだからノックくらいしろよ。」
「お、藤代に笠井か。どうした?」
「俺は明日のメニューのことでキャプテンに聞きたいことがあって。で、あっちは、」
「みっかみセーンパーイッvv遊びましょー!!」
「ウゼェーッ!!っつか触んな脱がすな押し倒すなこのバカ代ーッ!!」
「‥‥というわけで来たんですけど。」
「そうか。悪いが少し待っていてくれるか?食堂にいってくるから。」
「何か作られるんですか?夜食とか?」
「三上に犯罪抑止用の食事をな。」
「人を犯罪者予備軍みてェな言い方すんなッ!」
「本当のことだろう、暴れると言ったのはお前だぞ。あぁ、二人も食べるか?作ってくるが、」
「御相伴させてもらってもいいなら。で、何なんです?」
「ああ、‥‥あ、そういえば笠井もそのほうがいいと言っていたそうだが、不都合や意見があるなら、気軽に話してくれてもいいんだからな。まぁ、どこかの誰かみたいに偉そうでは困るが‥‥。」
「うっせぇっつの!いいからとっとと行ってこい!そんで俺に食わせろ!!」
「?何を‥‥」
「うん、三上がどうしてもバナナが食べたいと言っ‥‥」
「ええぇえッ!!?ダメダメダメダメ、駄目っすよ三上センパイってば!!!」
「藤代、もう遅いんだからあまり大声は出すな。近隣に迷惑だぞ。」
「キャプテンッ!!何落ち着き払ってんスかッ!そんなに身内から犯罪者を出したいんですか?!」
「いや、だから三上の犯罪防止にだな、」
「バナナって、三上センパイがバナナッて‥‥ッ!ちょっと上目遣いだったりなんかしてバナナ頬張ってるなんてその姿自体が犯罪的じゃないですかッ!!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
「部活の時のバナナだってコーチ言いくるめて何とか代えてもらったのに‥‥!!」
「‥‥ああ、レモンの砂糖漬けに変更は藤代の仕業だったのか。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
「だから駄目!!バナナ禁止ッス!!犯罪は駄目です!!」
「‥‥渋沢。」
「うん?」
「俺を犯罪者にしたくねぇなら‥‥」
「ないなら?」
「握りつぶせ。」
「ははは、今日は犯罪抑止よりも隠蔽にするか。‥‥笠井、」
「んー‥‥。チョコバナナ1本で証人、買収されますけど。」
「そうか。‥‥三上、だ、そうだ。」
「ッ、一遍地獄見て来やがれこのバカがーッ!!」
「‥‥‥ッて、ギャーッッ!!!」
「‥‥うーん、藤代にもコーチを言いくるめるなんていう小技が出来るようになっていたんだなぁ。」
「成長したもんですね、誠二も。」
「ところで笠井はバナナの方がいいと言っていたそうだが。」
「あぁ、‥‥まぁどちらでもいいんですけど。そのほうが犯罪的に目に楽しいですし。誠二も黙ってればいいのに。」
「ははは。やはり犯罪は密やかに行うべきだな。」
「んー、でもあれじゃもう、バナナになっても先輩絶対食べないでしょうね。」
「そうだなぁ‥‥。うん、炎天下のアイスなんてどうだ?」
「いいですねそれ。予算組み込んでおきましょうよ。」
「そうだな。」
名門武蔵森、松葉寮。
エースの悲鳴と司令塔の犯罪は、守護神とネコ目のDFががっちり握りつぶし、
今日も今日とて平和な日常。
終幕。
■アトガキ。(03.06/2003)
渋沢の役どころ、辰巳の方がよかったかもね。
運動の合間にてっとりばやいカロリー補給と言えばバナナが相場です。(え?)
藤代にはもう一つ台詞があったんですが、まぁ下品なので止めました。ははは。
大丈夫、三上先輩が咥えんのはキミのヤツだけだ。(‥‥。)
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