ある愛のうた。2






ある暑い夏の日の出来事。

「センパーイ、これ頼まれてた雑誌です〜。」
「あー。」
「センパイってば洗濯物、乾燥機に放り込んだままじゃ皺になっちゃうんですよ?シャツアイロンかけときましたね、ココに置いときます〜。」
「おー。」
「あ、コレさっきコンビニ行ったんスけど、おみやげです。センパイ『旨茶』好きでしたよね、」
「‥‥‥‥『爽健美茶』がいいな‥‥。」
「え、でもこの前は『旨茶』がいいって、」
「『爽健美茶』飲みてェな。」
「でッ、でもあの、寮の前のコンビニ『爽健美茶』置いてない‥‥、」
「飲みたい。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥。ちょっと、でかけてきま〜ッス。」




「‥‥‥‥‥‥藤代‥‥。なんて甲斐甲斐しいヤツなんだ‥‥。」
「?どうした、辰巳。そんなトコにぼーっと立って。」
「どうしたんですか、暑さにやられちゃいました?」
「ッと、渋沢、と笠井か‥‥。いや、なんだか藤代が、憐れに見えてな‥‥。」
「どうかしたのか?」
「?」
「どうもこうも‥‥。三上とのやり取りをみるにつけ、な‥‥」
「ああ、アレか?まぁ気にするな。いつものことだろう。」
「まぁ‥‥。しかしなぁ‥‥。」
「そうですよ辰巳先輩、本人達は楽しんでるんでしょうし。」
「まぁ‥‥、ッて、え?」
「そうだぞ、辰巳。」
「‥‥‥‥楽しむって?」
「いや、だから『楽しんでる』んでしょ?ねぇキャプテン。」
「ああ、だろうな。」
「‥‥‥‥‥‥何を?」
「え〜っと、なんて言ったらいいのかな、ん〜‥‥『女王様プレイ』?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥はい?」
「だから、三上先輩が女王様、誠二は下僕。尽くし尽されでも夜は逆っていう‥‥う〜ん、ネーミングがイマイチだなぁ。キャプテンだったら何て云います?」
「え、俺か?なんだろう‥‥『下克上ごっこ』とか。」
「あはは、『ごっこ』ってつけるとなんかお医者さんごっこみたいで雰囲気でますね〜。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
「そうか?俺は『女王様プレイ』の方が三上には合っていると思うが。」
「う〜ん、そう言われればそんな気も‥‥。でもホラ、誠二もあんなヤツだし。」
「そうだなアレだしな。でも三上もあれで、結構ノリがいいからな。」
「ま、どうでもいいですけど。俺の安眠妨害じゃなければ。」
「そうだな。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
「‥‥ん?おい、辰巳どうした?」
「あれ、辰巳先輩、座り込んで、どうかしたんですか?」
「眠いのか?かといって廊下で寝るのはいただけんぞ。」
「そうですよ、先輩、通行の邪魔ですよ。それとも本当に暑さにやられちゃったんですか?先輩?」
「おい、辰巳。こんなとこで寝ていたら帰ってきた藤代に踏まれ、」


ムギュ。


「‥‥‥‥るぞ?と言おうとしたんだが、遅かったか。」
「あああッ?!たた辰巳センパイッ!!!ゴメンナサイ踏んじゃいましたーッ!!」
「いやそれは見れば判るって、誠二。」
「‥‥あれ、竹巳〜。やほ〜。」
「やほ。おかえり、早かったね。」
「あ、うん。校門のトコでさ、クルマの桐原監督を捕まえ‥‥じゃなくて、会っちゃって。丁度いいから駅前のコンビニまで連れて行かせ‥‥いやいや、送ってもらったんだ。」
「へぇ。ラッキーだったな、藤代。」
「えへへ、そうでしょ〜?これも愛のパワーのなせる技ッスvv」
「愛のパワーで桐原監督を脅したワケか。」
「やだなぁキャプテンってば脅すなんてしてませんよぅvvちょっと強引に頼んだだけッス☆」
「まぁな、FWには強引さも必要だな。」
「えへへ。」
「それはいいとして誠二、早く降りてあげなよ、」
「ほえ?どっから?」
「辰巳先輩。」
「あああッ!!スンマセンスンマセンッ!!」
「三上、待ってるんだろ?」
「ッ!!そうだ三上センパイッ!!待ってて下さいねッ今行きまーッすvv」




「楽しそうだな。」
「楽しそうですね。」
「あの調子じゃ今日は俺の‥‥三上の部屋かな?」
「じゃぁキャプテン、今日藤代のベッド使います?」
「そうだな、悪いが今日はお前らの部屋で寝かせてもらうか。」
「今のうちに服とか取ってきておいた方がいいんじゃないですか?」
「そうしよう。まだ始まってないだろうしな。」
「はは、さすがに現場は踏み込みたくないですよね。」
「ははは、そうだな。」




「あ、辰巳。そんな所で寝ていたら身体に悪いぞ?早く部屋に戻れよ。」
「辰巳先輩、おやすみなさい。」




暑さにやられるとか。
廊下で寝たら身体に悪いとか。
辰巳を倒したのは暑さでも敵チームDFでもなく自分の事を真顔で心配するキャプテン(でも助けない)だったり礼儀正しく挨拶をして去っていく可愛い後輩(でも助けない)だったりトドメをさしたのは2トップを組んで早幾月アイコンタクトだってお茶の子サイサイドンとこい☆な同ポジションの後輩(その仕打ちさえ忘れている)だったりの、 友愛と信頼に満ち溢れているハズの、チームメイトだったわけだが。

爽やかにGKとDFが退場したその場に残されたのは、倒れ伏すFW、ただ一人きりだった‥‥。

それは、ある暑い夏の夜の、出来事。



終幕






■アトガキ。

笠井と渋沢という組み合わせが好きだと気づいた瞬間。
藤代くんはものすごい三上に尽してそうです。
しかし無償の愛ではなく見返りももらってるようですね(笑)

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