ある愛のうた。4






10月初旬の武蔵森サッカー部寮、寮内食堂にて。
衣替えの季節のこと。

「辰巳センパーイ、おっはよーございまッス!一緒にメシ食べましょうv」
「ああ、おはよう藤代。‥‥元気だな、朝から‥‥。」
「ええ?当たり前じゃないっすか!だって秋だし!!」
「(‥‥秋と元気とどういう相関関係があるのだろう)‥‥そうか。」
「そうだな、秋だしな。」
「(ビクッ)し、渋沢、」
「あvキャプテン、おはよーございます!ご飯早いっすね。」
「おはよう。」
「‥‥‥、お前、足音消して背後に近づくなよ‥‥。」
「ん?別にそんなつもりはなかったんだが。‥‥ああ、藤代。」
「はい??」
「ネクタイはキチンと締めなさい。あと縛り方も練習しておけ。じゃ、お先に。」
「(‥‥‥‥‥‥縛り方?締め方じゃないのか??)」
「え〜、ちゃんと勉強したのにぃ‥‥。だって結構難しいんだもん、アレ‥‥。」
「‥‥って、オマエ、去年や今年の春はどうしていたんだ?」
「え、ネクタイですか?してませんでした。」
「‥‥‥‥教師にうるさく言われるだろ‥‥。式典とか‥‥。」
「だぁって、出来ないモンは出来ないですよ。どうしてもって時は、笠井にしてもらってました。」
「‥‥‥‥‥‥。」
「そんな呆れないで下さいよぅ。今はなんとか出来ますって!この間から本で読んで勉強してるんですから!」
「実践してみろ。」
「え?えっと、こうやってぇ‥‥」

5分経過。

「‥‥‥‥判った、もういいから、貸せ。」
「え、でもまだ、」
「いいから貸せ。」

待つこと10秒。

「お〜、すごいです辰巳センパイ。ハヤワザ〜。伊達にトシ食ってないですね!」
「(歳って‥‥。)これが普通だ。藤代ももう少し練習して‥‥‥あれ?」
「は?どうしました?」
「藤代、これT.Kって‥‥。笠井のじゃないのか?イニシャルが‥‥」
「あ、笠井のスペア借りたんです〜。」
「‥‥‥‥。自分のはどうしたんだ。衣替え早々なくしたとか言うなよ。」
「え?いえ無くしてはないですけど、今日ちょっと使いものにならないかな〜、なんて。」
「‥‥‥‥は??」
「誠二。」
「あ、竹巳。」
「笠井、」
「おはようございます辰巳先輩。‥‥誠二これ、渋沢先輩から。」
「ん。‥‥あ、ネクタイだ〜。」
「洗濯アイロン済み。」
「さっすがキャプテンvvいい奥さんになれるよね、あの人。」
「それに異論はないけど。全く、キャプテンにこんなことさせるの誠二くらいだよ、もう‥‥。」
「ん〜。」
「もうちょっと縛り方研究しなよ。‥‥言っとくけど俺のでやったら殺すよ?(ニコ)」
「ん?やんないやんない。あれはさぁ、「俺の」でやるから意味があるんだよねvv(ニコニコ)」
「そういうもの?まぁいいけど。でもネクタイとか伸びるし、まだそれならベルトとかのが好くない?あと、Yシャツとか。」
「ん〜、それもイイカンジなんだけどさ。この前ベルト使ったら、手首擦りきってすっごい可哀相でさぁ。ま、痛がって泣いてんのもすごい可愛かったけど、そのあとスッゲェ怒られて。」
「‥‥‥‥、ああ、アレ誠二がつけたのだったワケ?」
「モッチロン☆俺以外のヤツがつけたんだったらそれなりの報復かましてるよ?」
「それもそうか。」
「でね、ホラせっかく秋になって、冬服だしネクタイ!使わないテはないでしょ?」
「まぁね。解らなくもないよ。でもまぁ、あんまり痕とかつけると先輩も可哀相だし、もうちょっと勉強したら?」
「あ、ソレキャプテンにも言われちゃったよ〜。」
「昨日貸した本、もうちょっと役立てなね。」
「サンキュ〜ぅ。」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥あの。ふ、藤代?」
「なんですか辰巳センパイ?あ、もしかして人参食べてくれるとか。やっさし〜いvv」(←人参を移動中)
「ネ、ネクタイなら、縛り方‥‥と言っても勿論いいが、締め方とか結び方、のほうがより一般的じゃないか‥‥?」(←人参どころではない)
「そぉッスか?どっちでもいいけど。貸してもらった本は『縛り方』って書いてあったから。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥なんてタイトルの本だ?」
「『人体拘束図会(めざせ緊縛マスター!初心者にもバッチリ・簡単図解解説付)』。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(涙)。」
「かなり古い本だから、本編で使ってる道具は縄なんですけど、カンタン図解の方に現代向けアレンジでネクタイとかベルトとかの使い方が出てるんスよ。便利ですよね〜。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。藤代、」
「手首ゆわえるのは結構上手くなったのにな。‥‥ちょっと失礼、センパイ。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥ッ!!?」

シュルシュル、きゅ。←この間3秒。

「‥‥‥ほら出来た。ね?結構上手いしハヤワザだと思いませんか〜?昨日も成功したし。全然身動き取れないっしょ?‥‥だいぶ慣れたつもりだったんだけどなぁ。」
「痕を残すようじゃまだまだ慣れたとはいえないぞ、藤代。」
「あ、キャプテン。今日は出るのも早いっすね。」
「日直だからな。とりあえず、三上には俺のリストバンド貸してやって、午前の授業は休むように言ってあるから。‥‥ウィークディは手加減してやれ。じゃぁな。」
「はぁいvvあ、待ってください、俺も出ます!‥‥んじゃ辰巳センパイ、お先っす!」


「あれ、辰巳先輩。どうしたんですか可愛い手首しちゃって。」
「‥‥‥‥‥‥笠井。」
「何ですか?」
「あんまり藤代に余計なこと、教えないでくれ‥‥(涙)」
「余計なことなんかじゃないですよ。三上先輩ってば照れ屋だからやたらソノ前に暴れてくれるんですよね、人の部屋でうるさいったら。縛られてればちょっとは大人しくなってくれるようだし。‥‥‥‥あれ、何泣いてるんですか先輩?」

「‥‥‥‥とりあえず、コレ解いてくれ‥‥。」


名門武蔵森学園、10月の爽やかな風が吹き抜ける、寮内食堂での一幕。
頑張れ辰巳、冬服は始まったばかりだ。
まだマフラーが残ってるぞ。



劇終!






■アトガキ。

今回は三上さんがお休みですね。
無駄なところで器用そうな藤代くん。
マフラーでもやる気マンマンだね!(私が)
‥‥辰巳にもそろそろお休みの回をあげて快復させてあげるべきか。
でもそしたら落ちがつかない。(辰巳はオチ要員であること発覚)

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