キラキラ光るボクをみつけてよ。





















Pinkish Sniper





















寒いのは嫌いじゃない。

というか、寒いという事自体が自分の中ではあんまり問題にならないらしい。‥‥らしい、って、自分の事なのに変だとは思いはするけど、実際そうとしか言い様がない。
寒いなぁ、とは思うけど、それだけ。
少なくとも、人の呼気であったまったファーストフードなんかに入るよりは、こうして閑散とした路地に座って、自分の吐く白い息を眺めてるほうが何倍もマシだと思う。
普段は寒がりの親友に合わせて、そういう店に入りもするけれど、それはそれだ。今日は彼は居ないのだから。
それに、少なくとも、首元は暖かい。‥‥ちょっと、目には痛いけれど。

今日は、俺の誕生日だ。

別に嬉しいわけじゃないけれど、俺の誕生日だという事で待ち合わせてくれる恋人がいるのは、幸せなことだと思う。
祝ってくれる親友が居るのも、大変に幸せだとは、思うのだ、けど。

「だからって、なんでコレなんだろう‥‥。」

結人のする事はよく解らない。

ぼんやりそう思って、息をつく。
白い息が空気にのって、溶けることなくあたりに広がる。
それは、貰ったばかりのプレゼントである、首に巻いたフロストピンクのマフラーにもかかり、少し揺れて、キラキラ光った。






何故だかこれをくれた結人は、ものすごく楽しそうで。
絞殺されるかと思うような勢いで、首に巻かれた。
夕闇せまる街の灯りを受けて、キラキラ光るピンク色のマフラー。

『それつけてたら、多少暗くてもすぐに見つかるだろ。』

電飾代わりなわけ?

『ぼんやりしてる一馬にも見つけやすいって。なぁ?』

結人、それはちょっと一馬に失礼なんじゃ‥‥。まぁ確かに、一馬はちょっとぼんやりしてるけどさ。試合のときとは大違いだよね。試合中は、時の先さえ知ってるかのように前へ前へと進んでいくのに。まぁそういうところも可愛いんだけど。

‥‥と言ったら結人に笑いながら殴られた。






少しずつ電飾に灯りが入りだした頃。
見上げた空はずっしり重たく立ち込めて、暫らくしたら雨になると思わせた。雪は無理かな、ちょっと気温が高いかも。
それでもやはり、吹き始めた風は冷たくて、反射的に目を瞑る。

「‥‥随分ハデなマフラーしてんな、英士。」

開いた視界に立ってるのは、少し息を切らせ頬を赤くした一馬で。たぶん走ってきたんだろう。待ち合わせした此処は、一馬の学校から遠いから。
持っていた学生鞄と、今日の夜と明日着る私服を入れたバッグを足元に投げるように置いて、大きく息をついている。
‥‥走ってきてくれた、ただそれだけでこんなにも嬉しいのは、一馬だけだ。

「見つけやすかった?」

辺りはうっすら闇に包まれていて。
濃紺の学校指定のコートを着た一馬の姿は、闇にそのまま溶けてしまいそうだった。

「結人のプレゼント?」
「うん。‥‥似合わない?」
「う〜、ん‥‥。結人って、たまにわかんねぇ‥‥。」

‥‥‥‥全然俺の問いに答えてない一馬の応えだけど、言いたいことは解ったので、俺は苦笑して彼が足元に投げた鞄を拾い上げて、歩き出した。
あ、鞄、と小さな声が後ろからしたけれど気にしない。
そして一緒に夜の街を俺の家に向かって歩く。

「それにしても、ピンクのマフラー‥‥。」

そろそろ息の整った一馬が、改めて呆れたようにそんなことを言った。ついでに、フワフワとゆれる羽根みたいな毛を、俺の首に触らない程度にちょいちょいと触っている。
なんだか仕草が猫みたいで、可愛い。
マフラーは、少ない光源を受けてそれでもキラキラと輝いてるみたいに、闇の中に浮かんでいた。

「マフラー自体は可愛いよな、うん。キラキラしてる。」
「‥‥‥‥、可愛いマフラーつけてる俺は可愛くないと‥‥。」
「え、えーっと‥‥。ははは。」
「電飾代わり。」
「は?」
「結人が、『ぼんやりした一馬にも見つけやすいように』だって。」
「なんだよそれッ!」

くっそ結人今度会ったときシメる、と到底無理なことをブツブツ言ってる一馬は、やっぱり可愛い。

「見つけやすかった?キラキラしてる俺は?」






「バカ、英士がどんな格好でも俺が見失うわけないじゃん。」






‥‥‥‥こういう事を素で言ってくる一馬は、やっぱりとても、たとえ結人に殴られてもすごいすごい可愛くて。
どした、英士?なんて、きょとんとした顔で訊いてくる一馬に不意打ちでキスをして、彼が怒り出す前に俺はダッシュで冬の街を家路へと、駆け出した。






結人。キラキラしてるピンクのマフラーは、電飾代わりにはならなかったけど、可愛い一馬を拝む材料になりました。凄い感謝します。
‥‥‥‥って言ったら、今度は笑って蹴りが飛んでくるだろうから、言わない事にする。




end.(01/27.2002)

back