小説なんて、ちっとも楽しくない。
ノベライズ
「ケースケくんケースケくん、本屋寄ってもいいですか?」
「いいぜ。」
俺は小説が好きじゃない。
好きじゃないっていうか、あんまり読まない。そんな時間あったら、サッカーしてたいし。
読まないから、好き嫌い以前の問題じゃないかとも思うけど、小説が好きかって誰かに問われたとしたら、好きじゃないって答える。
特に、アレだ。恋愛小説とかいうやつ。
「あ、新刊が出てる。」
「ふーん。」
なんだって小説の中のコイビト達はあんな波乱万丈なわけだ?そんなワケねーだろ普通。
出逢ってセックスしてケンカして別れて未練タラタラにまた出逢って。
オイオイお前等の世界にはお前等二人だけしかいないのか?
もっと社会に参加しろよ。社会的活動、奉仕の精神を持ちやがれ。
愛は地球を救うかもしれないが恋愛は地球を救わないぞ。
「新書、新書のコーナーは、と‥‥。」
「スガ、あっちだって。」
恋愛なんてなくても生きてけるし。っていうか恋愛小説じゃ恋愛しすぎて死んでたり殺してたりするし。意味ないじゃん。
人間命あってのナントカだろ。死んだらそこで終わり。ジ・エンド。
っつーか現実世界で「私と一緒に死んで!」とか言われる事なんてあんのか?
それってどれくらいの確率だ?
いまこの本屋の中の人間に「恋人に殺されかけた事ありますか?」って答えて、あるなんて答える人間、何人いるってーの?
「あ、この作家さんの本面白いんですよー。ケースケくん読んだ事あります?」
「ない。」
少なくとも俺は無いな。っつーかあったらヤバイだろこの短い人生で。
もし仮に「私と一緒に死んで!」とか言われたとして、俺なら怖いとか思う前に引くね。絶対。
オイオイオイしっかりしろよ、みたいな。
っつーか言ってる本人(居たとして、だ)だって引くだろ。
「あとはー、文庫の‥‥あ、コレも買お。」
「‥‥スガ、お前どれだけ買うんだよ?」
‥‥何時の間にやらスガの手には本の山。っていうかカゴ持ってるし。本屋に添えつけられたカゴ(会計前の本入れて、移動するヤツな)見る度に、おいおい使うヤツ居るのかよ?とか思ってたんだけど、まさかこんな身近にいるとは。
スガは見かけに寄らず(?)本が好きだ。
鞄の中には常になにがしかの本が入ってる。
たまに待ち合わせたときとか、よく本を読んでるところを見かける。
俺は本を読むの、好きじゃないけど、そうやってスガが本を読んでるところを見るのは好き。
でも本当に好きなのは、俺が傍に行ったら絶対に本を閉じるところ。
そんなアレコレをツラツラと思いつつ、俺がスガの持つ本(の入ったカゴ)を見ていたら、ヤツは少し困ったような顔をして俺を見てきた。
「あー、っと。ごめんなさい、ケースケくん疲れちゃいました?ここの本屋広いから、つい嬉しくて‥‥。」
「や、別に疲れてないけど。」
当たり前だろ、俺ら普段どれだけ鍛えてるって思ってんだよ。
多少歩いたくらいで疲れてたまるか。
っつーか、スガが疲れてないのに俺が疲れたとしたら、自分にムカつくね!その翌日から走り込みの量倍増してやるよ。
「ごめんね、会計してくるからあっちの席座ってていいから‥‥」
「だから疲れてないって。」
「でも、」
しつこい!!
「お前といたほうが楽しいんだよ!」
独りで座っててもつまらないだろうが!
なんで解らないんだこの男は。普段は呆れるくらい察しが良いくせにこういうところだけ何故に鈍いんだ。全く。
‥‥とかなんとか思いつつため息ついて、それからスガを見上げたら。
「‥‥なにオマエ。なんでそんな赤くなってんだよ。」
「‥‥‥‥‥‥自覚なしですか。ケースケくんてば‥‥。」
なんだ。なんなんだ何だってため息ついてるんだ。失礼な男だな!
「えーと、それじゃ一緒に行きましょうか?」
「当たり前。」
歩くスガの横を歩いてく。
ガサガサというのはカゴの中の本達。
「お前、本好きだよなー。」
「そうですか?」
「オマエん家行ったら、本たくさんあるじゃん。」
「ケースケくんはあまり本、読みませんね。」
「うん。だってなんかウソくさいし。」
「ウソ、」
「恋愛小説とか。楽しくない。」
「そうですか?」
ズッシリと重い袋を抱えて、俺とスガは本屋を後にする。
今日は俺ん家に泊まりなので、スガは重い本の他に着替えやらいろいろ詰めた鞄も持ってた。重そうだ。
「重そうだなー。」
「じゃぁちょっと持ってくださいよ。」
「ヤダ。重いじゃん。なんで俺が。」
「‥‥‥‥‥‥。」
大体、そんなたくさん本なんて買うスガが悪いんだよ。
あんなイキイキしちゃってさぁ。カゴ一杯になるまで本買いやがって。
「つまんないつまんない、つまんなーいっ。」
「は?」
「恋愛小説。」
「うーん‥‥でもモノによっては、面白いのも有りますよ?」
重い本達を抱えて困ったようにいうスガに。
結構、ムカついた。
「ケースケ‥‥ぉわッ?!」
「それじゃ訂正する。」
あんまりムカついたもので。
襟首掴んで、引き寄せて。
「俺が、つまんねー。もっと俺を構いやがれ。バーカ。」
そして、噛み付くみたいなキスを。
「‥‥ッけッ、ケースケく‥‥?!」
ドサドサドサーッて、もの凄い音とともに本が地面に散らばった、その音に混じってスガの慌てきった声。
驚いた表情。ちっちゃい目なんか、まんまるに開いてさ。
「じゃぁな、先帰ってる。10分以内に来ねーと締め出すからな。」
「え、あ、ちょっと待‥‥っ!!」
慌てふためいた声になんて振り返ってやらない。
俺は軽いステップ踏んで、走り出した。
あぁなんかスッキリしたな。うん。
あー、楽しい。慌てて本を拾い集めてるスガの様が目に浮かぶぜ。
「楽しーいなっと♪」
小説なんて、ちっとも楽しくない。特に、恋愛小説。
だってほら、現実の恋愛のが、こんなに楽しい。
「早く来いよ、スガ。もっともっと楽しいことしよう?」
俺と一緒に、現実の恋愛楽しもう?
‥‥ケースケ×スガくさい(笑)
end.(05.03/2002)
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