頭の良過ぎる人間は始末に負えない。
其れが行動力のある人物であったら尚更だ。

三上はつくづく思う。

「お前なぁ‥‥」
「なんだ」

何だじゃないだろ何だはこっちの台詞だ何だその格好、っていうか制服!制服?!見慣れすぎたカラーリングのブレザーにシャツにネクタイ以下略!何だそれはコスプレか?コスプレなのか?!ちょっと待てそのブレザー微妙にみたことあるぞ、いやウチの制服だっつー意味じゃなくて!どこかで誰かが着てたヤツだよそうだよ!確か一年くらい前まで俺の寮部屋に吊ってあったやつだよな「また背が伸びてな‥‥まったく制服代もバカにならないのに」と困りきった声で身体測定後に制服を新調しやがったルームメイト(俺は1.8センチしか背が伸びなかったのにクソッタレ!!)がいたよいたんだよ、あの野郎!!

「しーぶーさーわーぁ‥‥ッ!」
「む、渋沢ならば部活前に一度寮に帰ると言ってさきほど帰寮したが」

さっきそこですれ違ったぞ。と。
事も無げに言う相手に、三上はまったくもって、つくづく、思う。

始末に負えない、こいつは本気で始末に負えない。
あと自分のルームメイトも!!

いろいろと思うことがありすぎてふるふると身体を震わせる三上を前に、しかし当の不法侵入者はいつもながらの淡々とした表情。
そう、不法侵入者。明らかに。

「‥‥あのな、不破」
「む、なんだ」
「ここは何処だ?」
「武蔵森中等部校舎本館北側1階、技術工作室前およびテニスコートへの出入り口前。ついでに三上亮の正面。なんだ場所を訊くとは。さてはお前迷子か?」
「違う!ついで言うな!ああああもうどこからつっこんでいいのか!!」
「落ち着け三上、常に平常心を保たねばいいミッドフィルダーとは言えないとこの前本で読んだぞ」
「ここはフィールドじゃねぇからいいんだよ!」
「常日頃の心構えが重要だとも書いてあったぞ。カルシウムが足りてないのか?なんだったら俺が開発した小魚その他入りプリンの実験体に‥‥」
「ならんわボケ!!ていうか『その他』すごい気になるな!!」
「その他の内訳を教えてもいいが聞けばさらに気になることになるぞ?!」
「く‥‥ッ!」

三上は口をつぐんだ。
無理だと思った。なんかもう、いろいろ。

静かになった三上を不法侵入者‥‥不破が、じっと見詰めている。何を思っているのかはその淡々とした表情からうかがい知ることができない。いつものことだが。
‥‥そう、いつものことだ。

この、一応恋人、らしき相手の思考が、読めないのは。

「‥‥お前、本当読めねぇな‥‥」
「そうか?」

渋沢には解り易いと言われたが。
その台詞に、三上はますます脱力する。と同時に、微妙に苛つく。

‥‥まぁ、そもそも個人的に知り合ったのは渋沢のほうが早かったわけだし?今だって、まったくもってその理由が全ッ然解らないのだが、渋沢の制服を着ているし。つまりその制服貸与の為の会話をしていたというわけだ、俺の知らないところで。ついでに渋沢にとってはコイツは解り易いときた。俺にはまったく理解不能な行動を、アイツは解るというわけだ!!チクショウ悔しくなんてねーんだからな!!‥‥いやそもそも本気で解んねーし、なんなんだよもう‥‥。

「‥‥で?なんなんだよ、なんでそんな格好で此処にいんだよ、え?」
「三上に会いたかったから」
「は?」









「暫く会っていなかったので、お前に会いたかったからだ」









この制服なら、そうそう見咎められないだろうと、渋沢が。
そういう不法侵入者は、いつもながらの淡々とした表情で。

‥‥始末に負えない。頭のいい人間は、本当に始末に負えない。へんに行動力があるせいで、まったくもって始末に負えない、のだが。




「‥‥‥‥‥‥‥‥ああ、そう」
「そうだ」
「まぁ‥‥そういう理由なら」
「そうか」




ああ、まったく。
三上はつくづく、思う。本当に、始末に負えない。









三上、と淡々とした声さえ嬉しいと思ってしまう自分は、本当に始末に負えない!!







title/『無条件降伏!(08./武蔵森 校舎)』
(02.28/2009)

photo by [10minutes+]

渋沢は二人とも可愛いなぁ、と思ってりゃいいですよね。