「Happy Birthday。」
「は?」
出会いがしらのその台詞に、三上は思い切り面食った。
大晦日というのは、どこか不思議な日である。
クリスマスのように華やかではない、元旦の如く陽気でもない。
かといってしめやか、というわけでもないし、けれど確実に『普通の』日とは違う。
不思議な日だ、と三上は毎年この日を迎えるたびに、こっそりと思っていた。
(ほんの僅かの違和。日常の中の非日常。)
だから、初めてその人の誕生日を知ったときは、妙に納得してしまい、反って相手に胡乱な顔をされたことも記憶に古くなかったりする。
(不思議な奴だから。)
しかし、だからといって。
「お前ねぇ‥‥。その台詞、変だろ。」
「どこがだ?」
待ち合わせて最初の台詞、挨拶もなにもすっ飛ばしてため息をつくようにはいた言葉は、反論の余地がありすぎて反論不能という、えらく逆説的な攻撃(?)に、三上は次の言葉を奪われた。そして今度こそ、本物のため息をつく。
「三上?」
しかし、当の三上にため息を(それも待ち合わせて出会って、未だ1分もたたないうちに)つかせた人物はといえば、不思議そうな面持ちで、目を瞬かせていて。
具合でも悪いのか、と見当違いなことをぽそぽそとこの上もなく真剣に言ってくる姿に、三上はだんだんとおかしな気分になってきた。
(不思議、不思議な。)
「‥‥三上?何を笑っているのだ、」
「‥‥‥‥お前がおかしいから。」
「ぬ。おかしいのはお前の方だ。急に笑い出したりして、」
「あー、ハイハイ。」
尚も何事かを言い募ろうとするのを、ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜるようになでてやることで黙らせる。反射的に目を瞑って、触れる指先に少し震えた身体が、なにか大きな犬を撫ぜているみたいだ、と益体もないことを思った。
(不思議で、愛しい。)
「三上、」
止めろ、と言外に告げる呼びかけに、三上は髪をかき混ぜていた手を止めた。と同時に、すばやく伸ばしたもう片方の手と一緒に、頭ごと引き寄せて、
「っつか、俺の台詞奪ってんじゃねーよ、お前は。」
「‥‥?どの台詞だ?」
「ハッピーバースデイ。言うのは俺。言われるのがお前。台詞取るな。」
「何故だ、変でも間違ってもいないぞ。」
「お前と過ごすHappyなBirthdayだから Happy Birthday だ。」
理に適っているではないかと、さも当然といった面持ちで。
反論の余地がこれまたありすぎて反論不能という、逆説的な台詞さえも。
「はいはい、俺がお前に Happy な Birthday をやるよ。」
「もう貰っているが?」
「じゃ、もっとたくさんな。」
「そうか。」
ふむ、やはり HappyBirthday だな、なんて。
愛し過ぎて可笑しすぎなその台詞に、三上は涙を流さんばかりに笑ってしまい、思いきり不思議そうな目で見られることになるのだけれど。
不思議で愛しい恋人と過ごす、不思議で大切な日は始まったばかりだから、そういうのもアリだろう、と思ったり。