「ほら、これやるよ」
「む、」

不破という人間はその態度から何から大概にして威風堂々傍若無人ではあるのだが、ある意味大変に謙虚なヤツでもある、気がするのだ、もの凄くたまにだが。 や、謙虚ってのも違うか‥‥妙なところが、すっぽ抜けてるというか。始末が悪いと言うか、しょうがないというか。

そう、例えばこういう時。

「箱か。‥‥何だ?」

そう言いながら、手のひらに乗せられた物体を、まるで世界最大の謎だとでもいう風に矯めつ眇めつ検分する、その優秀だという頭脳のなかに、どうして今日という日のデータが収められていないのか。いっそ不思議にさえ思う。

「箱ってねお前‥‥そんな味も素っ気もない言い方すんな。プレゼントだよ、プレゼント!」
「プレゼント。」
「そう!」

オウム返しに念押しで返して、めずらしくぽやーっとしたままこちらを見返してくる不破の、手のひらに乗ったウルトラマリンのラッピングリボンを弾いた。

誰かに特別なプレゼントをするときは、いつだってどんなときだって緊張する。
それなりに、いや密かに気合十分に考え、様々な選択肢からコレだというものを散々悩んだ末に選んで、「プレゼント用のラッピングお願いします」なんて言葉を、なんでもない風を懸命に装いながら言ったりなんかして。
それはもう緊張してるのだ、今この時でさえ。
だというのに目の前の相手ときたら、いつもながらの淡々とした薄味な表情で。
‥‥ああ多分まだ解かってないな、こりゃ。

「アホ、誕生日だろうが‥‥お前の」
「誕生日」
「そう!」

仕方がないのでタネ明かしだ。まぁ、今日12月31日がコイツ、不破の誕生日だというのは事実なのだから、タネもなにもないのだが。そしてコイツは、その事実をスッカーンとそれは綺麗に忘れていたらしいのだが。
なんだかもう、いっそ面白い気分になってくる。なんなんだこの、不破の抜けっぷりは。しかし、コイツならではと言ってしまえばそれで落ち着いてしまうというのが‥‥まったくもって始末に負えない。

「‥‥誕生日」

普段の不破ときたら、一体その自信はどこからくるんだ!と突っ込みたくなるほどの揺ぎ無い立ち振る舞いで、真っ直ぐすぎる視線と言葉にうっかり喧嘩の売買なんてのもままあって(しかも大抵の場合勝ってしまうあたりがいっそ腹立たしい)。
それなりの時間を一緒に過ごして、ムカつくこととか楽しいこととか、ちょっと甘いことなんかもあったりして。そして迎えた誕生日に。

「そう、か。今日は誕生日だったか」
「ていうかマジ忘れてたのかよ。‥‥俺が祝ってやるとか、祝われたいとか、考えなかったわけ?」
「考えなかった」

淡々と答える、こんな風にあっさり、自分のことはどうでもいいみたいに。
‥‥謙虚って言うか、なんていうか。一つ、大きくため息をついた。

全く本当に、しょうがない。

「三上」
「や、いいよいっそお前らしいわ、それも。それに俺が祝いたかっただけだから。お前は素直に祝われてればいいから。それで‥‥」
「話を聞け。‥‥三上、」




「ありがとう、嬉しい」




‥‥なんだかもう、いつだって妙に自信満々で偉そうで、そのくせ謙虚にどっか抜けてて。そして唐突にこんな、直球ストレートな言葉を叩き込んできたりする。
ああもう、まったく始末が悪い。しようがない。









たった一言を泣くほど嬉しいと思っている、自分が一番、始末が悪い。




end.(12.31/2005)