不破はあまり話さないタイプの人間だ。

勿論話さないわけではない、頭の回転も速いし語彙も相当にある、喋るとなれば一気呵成に流れるように言葉を操る。けれど、それでも総じて言葉が少ない。知己を得てから此方、共に過ごす時間が増していっても、それは変わらないままだった。
出会った当初は随分ととっつき難い相手だと思ったものだが、慣れてしまえばどうということでもない。言葉は少ないが、険悪なわけではないのだから。

その言動はとても素直。
凛と口を噤む、その姿はとても綺麗。

だからこそ、むしろ彼の話さない理由を知りたいと思い‥‥そして思い至ったときには、いっそ罠にかかった気分にもなったものだった。

言葉が少ないというのは、返せば無駄が少ないということ。
最小限の、自分の中で本当だと思える言葉を彼は話しているのだ。

無駄を削ぎ落とした言葉は切っ先の鋭さゆえに、時に誤解を招き攻撃を思わせることもあるけれど。それでも彼は少ない言葉を、大事に話す。

「そういうところが、とても好きだよ」
「そうか‥‥俺は、」

必要な言葉を必要なぶんだけ、大切に話してくれる。

「そうやって俺の言葉を大切に聞いてくれる渋沢が、とても好きだ」
「‥‥ありがとう」




言葉少ない大切な存在がくれる、大切な言葉を、これからもずっと大切にしていきたいと思う。




end.(12.31/2005)