昨日まで降っていた雨もどこへやら。
夕闇迫る雑踏は、甘かやなキャンドルライトに彩られ。
腕には深紅の薔薇のブーケ、翻るコートは星をちりばめた夜空色。
最良の笑顔と、最高の愛情を携えて。


季節は折りしもクリスマス。


「僕と恋をしませんか?」








「うっわ胡散くさッ」
「‥‥‥‥‥‥一言ですか‥‥」

語気が荒いわけじゃない、ものすごく珍しい台詞でもない。
いたってシンプル、単純明快なその言葉。
ストレートな言葉はいつだって身に沁みる。

「酷いー、なんでですかぁちょっと憧れを口にしただけなのにー」
「何故かと問われても胡散くさいものは胡散くさいとしか言いようがないしそれが何故胡散くさいのかと問われても要は胡散くさいから?ちなみにこの?は英語でいればisn't it ? 、肯定を求める疑問形の?だぜ。としか答えようがないんだけど」
「‥‥‥‥‥‥‥‥。」

何も其処まで連呼せずとも、と傍から見るものがあれば言ったかもしれないが。‥‥否、普段の彼らを知るものならば、逆に頷いたかもしれない。

「それでも敢えて答えをひねりだせっていうんなら、要はオマエが須釜寿樹だから。としかいえないんだけど」
「‥‥‥‥‥‥素直な答えありがとうケースケくん‥‥」

大手ファーストフードショップの狭いテーブルの上に肘をつき、ズゾゾ〜と音を立ててクリスマス期間限定シェイク(恋する☆ストロベリー味とかいう胡散くさいネーミングのシロモノ)を飲む圭介の前で、須釜は真剣に涙しそうになりながら(弱ッ)微妙な笑顔で応じたものだった。

「‥‥ケースケくんは、そういう憧れのシチュエイションとかってないんですか」
「憧れねぇ‥‥」

涙をこらえて話を続ける須釜の言葉に、圭介はやっぱりシェイクを飲みながら応じる。

「特にないかも」
「じゃぁ俺の憧れに付き合ってくれてもいいじゃないですか」
「てゆーか、『クリスマスに絶対会いたい』っていうオマエの為に遠路はるばるここまで来てやった時点で、十分つきあってやってると思うんだけど」
「それはそれコレはコレ。ケースケくんだって会いたかったくせにー」
「はいはい、そういうことにしといてやるよ」

完璧なまでのにっこり笑顔でのたまう須釜につられるように、圭介もシェイクに挿したストローを噛んで苦笑した。
苦笑した圭介に、また須釜が、綺麗に笑う。

「‥‥そういうトコがね」
「え、何か言いました?ケースケくん」

その問いに圭介は答えることなく、おおかた溶けたクリスマス期間限定シェイク(恋する☆ストロベリー味)を飲み干し空になった紙コップをトレイに戻すと

「ま、オマエが胡散くさいのは今に始まったことじゃないし胡散くさいヤツがヘンに現実味を帯びた事言ったところでオカシイだけだしな!」
「‥‥‥‥。ケースケく」








「だから胡散くさいオマエが言う胡散くさいことは全部本当なわけでそういう胡散くさいオマエが結構好き。‥‥というわけで、『俺と恋をしませんか』?」








目を見張る須釜に一度、それはそれは綺麗で完璧な笑みをむけ。圭介は席を立つ。
呆ける須釜を置き去りにして、すばやい身ごなしで店を出て。


季節は折りしもクリスマス。








追いかけてくるであろう恋人に、最良の笑顔と最高の愛情をささげよう。



end.(12.21/2002)
backgroundimage by [MICROBIZ]

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