「考察結果がでた。」

松葉寮多目的室(別名娯楽室)のドアを開けるなり開口一番そう言ったのは、寮生でもなければ学園生でもないにも関わらず泰然自若悠悠自適(ちょっと違う)何故ここにこうしているのか訊く事さえ馬鹿馬鹿しく思えてくるゴーイングマイウェイな黒髪の壊し屋、不破大地。

「そう。‥‥で?」

にこにこにっこり、21世紀の石原○次郎も真っ青な爽やか系(ややスポーツマンタイプでオロ○ミンCよりリポビ○ンDのCMのほうがお似合いかと思われる)スマイルを炸裂させたのが、この寮の住人であり武蔵森サッカー部においては神か仏か渋沢様かと伏し拝み奉られ(やはりちょっと違う)大事にされている守護神、渋沢克朗。

二人は恋人同士であった。

ついでにいうとお付き合い2週間と3日めだ。
ようするに付き合い始めてすぐ、今が一番楽しくらぶらぶしく、周囲にはこの上もなく暑苦しい時期である。(もうこの際男同士であるとかそういうことは瑣末ごととして片づけてしまえ)(命令形?)
‥‥が、そのわりに、こうしてみている限りではあまり暑苦しさを感じないのは、生来の二人の泰然自若とした態度が関係しているのかも知れない。
それは彼ら以外の人間‥‥、そう、ここは武蔵森学園所有の寮内、加えていうなら多目的室というパブリックスペースであって、この恋人たち以外にも、勿論人間がいるわけで、そういう少年たちにしてみれば、ほんの少しなり救いとなる部分であった。

「前掛け、一般的にいうエプロンと言うものは、」
「うん。」
「料理、洗濯、炊事といった場合に身につける二次的衣服だ。」
「そうだね。」
「身に付けるにおいての目的と言うのは、」
「うん。」
「炊事洗濯家事一般において発生し得る塵芥水撥ねその他を直接衣服・もしくは身体に与えないようにするためのものだ。」
「そうだね。」

並んで座るでもなく、ソファに差し向かいで座り、流れる水の如く話しつづける不破に、穏やかな相づちを返す渋沢。
その様は、一見、普通よりちょっとだけ仲のよい先輩後輩、若しくは幾分歳の離れた弟を見守る兄、といえなくもない光景である。
ぎりぎり、『微笑ましい友愛』と括れないこともない、そんな範囲である。

‥‥‥‥が。

「よって、渋沢の所望する『裸エプロン』はエプロンの持つ本来の機能より外れている。」

ガンガラガッシャーン!
バチィッ!
うぎゃぁッ!


(発生音の内訳:持っていた缶ジュースを落下させた・持っていたコーヒー入りカップ(自前)を落下させ破砕・その他それに類する事象3件、ゲーム中セーブ前データを誤って消去、余りの台詞に凍りついている間にコンピュータ対戦中のアレッサンドロデルピエロに華麗なミドルシュート(フリー)を叩き込まれる(by『WinningEleven』)その他破壊物多数事故(対人含む)多発)

「そうかな?」
「そうだ。裸体にエプロンとは非効率的だ。衣服をまとい、その上につけることにより塵芥水撥ねその他から効率よく身体を守る事が目的だろう。」
「そうかなぁ。」
「そもそも渋沢のいうように寝台の上でエプロンを纏ってどうだというのだ?ベッドの上では家事労働はないぞ。」
「でも新婚家庭の営みはあるよね。」
「‥‥?それも家事に入るのか?」
「入るよ。」
「むぅ‥‥‥。」
「試してみようか。論より証拠、実証は好きだろう?」
「‥‥ふむ。乗った。」
「じゃぁ行こうか。」

渋沢は優雅に立ち上がると、不破を伴い多目的室を後にした。


‥‥恐ろしいほどの沈黙の帳と、後で寮監先生に怒られる事必至の惨状を、多目的室に残して。


‥‥‥‥でも実は一番不幸なのは、この後幸せに自室にて午睡を貪っていたところを優雅にたたき出される、渋沢のルームメイト、三上だったりする。


2週間と3日めの一番暑苦しい恋人達に振り回される、松葉寮であった。




end.(06.28/2002)

こういう渋沢様もたまにはよろしいのではないかと。
ウチでは大概、白くてちょっと弱っちょなキャプですので。たまには。
ちなみにエプロンはキャプテンが家庭科実習でつくったの希望。
フリルは不可、何もないほうがエロさは際立ちます。

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