「無理をするからだ。」
慣れた声、頭上すぐ傍。
硬く絞られたタオルは良く水気が切られていて、冷たい感触だけが額を覆う。
GKの握力、こんな所で消費してんなよ、とか。熱に浮かされた頭で、埒もないことをぼんやりと思う。
「無理、ばっかり。」
慣れた口調、空気みたいに傍に。
なかなか下がらない熱は、オーバーワークによる慢性的な疲労と、加えて精神的なものだと、訳知り顔で医者が言った。
理由なんて知るはずもないくせに。まぁ、医者なんてそんなもんだ。
「‥‥なぁ、あまり心配させないでくれ。」
慣れた気配、空気みたいに、傍に。
誰にでも見せる、いつもの余裕に溢れた表情なんて要らない。
欲しいのは、眉を寄せてちょっと困ったふうな、拗ねて、少し泣きそうな。
俺の、俺の為だけの表情。
「なぁ、頼むから、」
慣れた声、慣れた口調、慣れた気配。
空気みたいに傍に居る人。
「三上、」
空気みたいに、もう手放せない。
「‥‥無理するな。」
手放せないから、俺はどんな無理もする。ごめんな。
end.(01.17.2003)
‥‥三渋?書いてる本人は渋三の筈でしたが。どちらでもお好きな方で。
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