渋沢克朗くんが風邪を引きました。



‥‥人間て、何でこういうときに限ってやりたい事とかでてくるんだろう。そういえば久しく本棚を整理していない。此処のところ忙しかったからな‥‥あ、あとビデオも。先日のモナコGP、撮ったはいいけどラベル貼り忘れて一体どのテープに入っているのか‥‥探したいな。わざわざ三上を拝み倒してまで撮ったのに。‥‥『彼』に頼んでも良かったか。そしたら堂々と自宅に遊びに行けたなぁ‥‥惜しいことしたかな。考えがセコいかな。‥‥あれ、そういえば録画の見返り要求されてないな。もしかして忘れてるのか?いやアイツが忘れるわけないか‥‥一体何を要求されるのだろう。ちょっと怖いな最近アイツも腹黒くなってきたからな‥‥一体誰に似たんだ。言っとくが断じて俺じゃないぞ。俺じゃないって言ってるだろ中西!この前なんか「ああ、俺の幼馴染みが汚されていく‥‥。」とか言いやがって、全く失礼な。そもそもどちらかというとお前の方こそ三上にいろいろ不埒なことを教え込んで‥‥‥‥ああ、違う違うこんなことを考えていないで寝なければ。風邪には睡眠。‥‥あ、そういえば明日資源ごみの日だよ。忘れてた‥‥新聞纏めないといけなかったんだ。それにしても何故寮なのに資源ごみの日は月に一日だけなんだ?せめて2週に一度あってもいいだろう。もしくはどこかに保管しておくとか。部屋の中に置いておくの邪魔なんだよな‥‥かといって新聞は個人でとりたい。受験も控えているわけだしそれでなくとも部活に時間を削られるわけだから、せめて新聞で世界の趨勢くらいは把握しておかないとな、うん。『彼』との話題にもなるし‥‥って、ああ、資源ごみー、新聞ー‥‥

「し、新聞‥‥。」
「新聞の心配は俺がするから、とりあえず自分の心配をしろ。」

‥‥‥‥‥。え?

「‥‥何で、居るの?」
「寝ろといっているのが解らないか?」

‥‥‥‥‥‥‥‥、いや、解りますけど。

「‥‥そ、うじゃなくて、」
「新聞なら纏めて出しておいてやる。場所は‥‥ああ、三上に訊けばいいか。」

そうそう、三上に訊けば‥‥‥‥って、そうじゃなくて!

「不破、く、」
「しかし資源ごみは月に一度とは不便だな、寮則を検討すべきなのではないか?‥‥あ、新聞とは此れか、とりあえず今日と昨日のぶんは取り分けておくか‥‥。と、鋏は何処に‥‥」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。あのさ。

「‥‥俺の、心配はしてくれないの、」
「新聞の次に。‥‥鋏を借りるぞ。」

‥‥いや、別におかゆ作ってもらって、あまつさえ食べさせて貰ったりとか?(むしろそれは俺がやりたい事だ)体温計代わりに額をあてて熱を測ったりとか?(これも俺がやりたい事だ)早く治りますようにーとかってオマジナイにキス(‥‥めっちゃやりたい!不破くん風邪ひいてくれないかな!)とかさ。 考えてたわけじゃないですが。
いや、うん。
もうちょっと、こう‥‥ねぇ?

黙々と(新聞纏めの)作業をする恋人の後ろ姿を眺めつつ、眠りについた渋沢くん。最後についたのはため息だったりなんかして。



‥‥平日の学生が他校の寮なんて場所までわざわざ足を運んだって時点で、誰が誰をどれだけ心配しているかなんて解りそうなものなのに。



そんなことにも頭が回らないあたり、やっぱり渋沢くんは風邪引きさんなのでした。




title/『新聞ナンバーワン』
end.(2002.10.06)

風邪ひきシリーズ最初

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