手には不思議な力があるんだよ。

ほら、『手当て』って言葉が、あるだろう?
勿論その意味は、病気だとか、怪我に対する処置を意味する言葉なことなんてとっくに解っているけれども、同時に、文字どおりの意味もあるんだ。
‥‥こう、手を当てる、ってこと。撫ぜるとか、そういうの。
手には不思議な力があって、それだけでとても好いことなんだって。
うん?根拠なんてないよ。具体的にどう『好い』のかなんて知らないし。

でも、とても好いことなんだ。

「根拠に欠ける説だ。」
「そうだね。」
「科学的証明もなにもない。」
「うん。ないね。」
「しかし、」

例えば触れ合う指先の熱。
節ばってざらざらとした皮膚の感触。

手のひらから伝わる、無音無形の、大切な感情。

「‥‥ふむ、渋沢の言うことは正しいようだ。」
「うん。」
「が、今後の考察の為のデータが不足しているな‥‥。」
「じゃぁ、またそのときは俺の手を使えばいいよ。」
「ぬ。‥‥では、早速そうしよう。渋沢、」
「はい、はい。」

手には不思議な力があるんだよ。
そう、それはとても好いことなんだ。




‥‥好きなひとの手は更に特別なんだよ、と。
考察が終わるとき君が理解してくれるよう、想いの力を込めて、君に触れよう。




title/『きみのてのひら』
end.(2003.04.17)



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