「星にお願いでもしたらどうだ?」
キャプテンはいつだって賢くて正しい。
「‥‥三上センパイが俺のこと好きになってくれるように!」
というわけで(何がというわけなのかなんて聞くなよ!)お願いしてみた。
寮の部屋の窓から、空を見上げて。夜空に向かって、お願いお星様。
まぁ曇ってたけど。星なんて見えなかったけど、雲の上には星が見えるって理科で習ったしさ。大丈夫大丈夫。タクのちょっと痛々しい視線だって、気にしない気にしない!しないったらしない!
「はぁ、‥‥まぁいいけど」
「マジっすか?!」
そして翌日。空は晴天、目の前にはこっくり頷いてくれる三上センパイ。
え、ちょ。本当に叶っちゃったわけ?
ええ、えええ、なんで。ちょっと星強力すぎね?曇っててもよかったわけ?いや雲の上に星はあんのか。あるんだよな理科で習ったし。
それ以来、三上センパイは俺の恋人になった。
彼女‥‥いや違うよな、彼氏?まぁどっちでもいいけど、告白以来、三上センパイは優しく‥‥
「藤代、ウゼェ。ちょっと黙ってろ」
「‥‥はいッス」
「なぁ渋沢、次の例会の時間なんだけどよ‥‥」
‥‥うん、いたっていつもどおりだ!いつもどおりの三上センパイだ。
しおしおとキャプテンと三上センパイの部屋の隅っこでジャンプを読みながら、センパイの後姿を眺めてた。
「センパイ、俺のこと好きッスか?」
「ん?ああ、‥‥うん。わりと」
それでもやっぱり、三上センパイは、俺の恋人。
星に願ったら、叶った関係。
「俺ら、恋人ですか?」
「そうなるな」
‥‥でも。でもねセンパイ、これってね、星のせいなんですよ。
アンタが俺のこと好きなのって、きっと星のせい。
俺がお願い事とかした星のせい。
だから。
「‥‥違うよ、センパイ」
「何が」
「俺ね俺ね、本当にセンパイが好きなんだよ」
「俺もだけど?」
「‥‥‥‥違うんです、センパイ」
アンタのそれは、星のせい。俺のお願い事の結果なんスよ。
ねぇそれは、さ。‥‥ニセモノでしょ?
「‥‥痛い!痛いセンパイ!!」
「うるせぇ。‥‥ああもう」
‥‥うん、もの凄くいい音した!
中身が空っぽのものほどよく響くっていうよね。うん、理科の教科書に載ってた(※太鼓。)。え、俺の頭ってからっぽ?いやうん、サッカーに関することだけ詰まってりゃそれでいいんだけどさ。あと三上センパイのことと。
三上センパイが、笑っててくれることと。
ああ、なのに。
「お前バカだろ。本当にバカだろ」
「だ、って。‥‥だって、センパイ」
俯く。空は見えない。星も見えなかった。今日は曇ってはいないけれど。
「‥‥あのなぁ、駄目か?信じらんねぇか、俺が、言うだけじゃ。‥‥俺より、星のこと信じる?」
「センパイ、本当に?」
「本当に」
「渋沢キャプテンより?」
「より。」
「俺、バカだけど?」
「確かにバカだな。‥‥でも」
「好きだよ」
今日は曇ってはない。星は頭上に輝いてる。
けど、もういいんだ。
「また星に願ってみるか?」
「‥‥いいッス。センパイに、お願いするから」
「なんて?」
「俺のこと好きになって」
「それは無理だな」
「ええええ?!」
「もう好きだから、好きに『なる』のは無理っつってんの。」
そういって、いつもみたいにシニカルに笑う三上センパイは、すごくすごくカッコよくて、星みたいに綺麗だった。
「‥‥渋沢ぁ、お前、あんまアイツにおかしなこと吹き込むなよ」
「いや、可愛くてついな」
title/『星に願いを』