きらきら瞬く銀の光。
空を彩り、地を照らす。




「お星さん、落っこって来てくれへんかなぁ。」
「隕石の衝突は地球の生態系に大きな影響を齎す重大な事象だぞ。」

あくまでも現実的でどこまでも的外れ。そんな聞き慣れた声と言葉に、シゲは声を立てて笑った。
近づく気配に、体勢は変えないまま。

視界を占めるのは銀砂を散りばめた深い藍色。
背中には夏の熱を抱いたコンクリート。

「何をしている?」
「お星さん、見てる。」

寝転んだまま首をめぐらせれば夏の夜空を背に、声の主。

「天体観測か。ふむ、お前にそのような趣味があったとは知らなかった。」
「イヤン、シゲちゃんこう見えてもロマンチストさんなんやで〜?」

ウインクと一緒に告げた軽口に首をかしげて考え込む、その姿があまりにも不破らしくて、シゲはもう一度、声を立てずに笑みを浮かべた。

抜け出した宿舎代わりの講堂では、今頃チームメイト達が暑さに唸りながら、それでも一日の練習疲れを癒す為に、そして明日も続く炎天下の練習に備え、深く眠っているのだろう。
屋上を緩く撫ぜていく風は、昼の名残りを色濃く残して潤み、夜空を彩る銀の欠片を瞬かせる。昼間の喧騒を拭い去った街は静かに、音もなく降り注ぐ星明りを受け止める。

「流れ星にな、お願い事をしたら、叶うんやて。」
「そういった俗説があることは、知っている。」
「俗説て、言い切るんやね。」
「当たり前だろう、単なる無機物に何が出来るというのだ。」
「せやね。その通りや。‥‥ただ、」

返される言葉はいつもながらの恬淡とした口調。
シゲはコンクリートに身体を投げ出したまま、夜の空気を震わせる淀みない声に応じながら、大きく息を吸った。

視線の先には、夜空を彩る銀の光。

「星は、とても綺麗やから、」

投げ出していた腕をゆるりと空へ差し伸べた。無言で佇む不破の視線が向けられたのを感じる。
大きく開いたてのひら、力を込めた指先。

指と指の間をすり抜け落ちる、決して届かない光。




(決して届かない)

(それはまるで  の、ような)




ハタリと腕を落とせば、やはりその軌跡を追ってきた視線の主に、綺麗だから何なのだ、と問い詰められた。

「ん〜?内緒。」
「話せ。」
「だぁから内緒って‥‥いいい痛い痛いて不破!ギブギブ!!」

剣呑な視線と繰り出される関節技を凌ぎながら、シゲはもう一度視線を空へと遣った。そこには変わらぬ様子で銀の光が瞬いている。




(きらきら光る銀色にも似た。)
(決して落ちてはこない、その人が。)




‥‥‥‥この手に落ちてきてくれたら、とても大切に、慈しんで、愛しむのに。




end.(05.08/2005)

ある方にチョーシくれて押し付けたシゲ不破にオマケにくっつけた乙女系成樹さん。
捨てて捨てられて辛いことも醜いこともしっているリアリスト、と見せかけてある部分ではきっと誰よりロマンチストさんだと思う。

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