「三上、」


いい加減にしてくれと思うときがある。


何も言わずに水分補給用のボトルを投げ渡してくるところ。
遅くまで、個人練習に付き合ってくれる。
忘れてきた教科書を何も言わないのに届けてくれたり。
少し頭がいたいかなと思っている日には机の上に薬(ご丁寧にミネラルウォーターのボトル付きだ)がひっそりと置かれていたし。
取り込んだままの洗濯物が朝起きたら綺麗にたたまれてクローゼットになおされていたりとか(‥‥棚の内訳をなんで知られているのか謎)、夜中に菓子を食うのはオマエの身体に良くないんだぞって眉を顰めて取り上げたりだとか、でもこっそり自作の夜食を差し入れてくれたりだとか。


「三上、」


いい加減にしてくれと。


「‥‥あああもぉッ!!何なんだよ渋沢っ!テメェは俺の母親か、それとも靴屋の小人かッ!?」
「恋人だな、三上の。」
「‥‥‥‥ッ、」


‥‥‥‥。いい加減にしてくれと、思うときが。


「三上、夜食作ったんだ、一緒に食べよう。」
「‥‥おぅ。」
「明日は俺は早出だからな、ちゃんと起きろよ?一応根岸にも頼んでおいたが、目覚ましはセットして‥‥」
「ハイハイ、わかってるって。」


いい加減にしてくれと、思うときが、ないでもないけれど。
いい加減にしろなんて言葉は、言わないでおこう。


「‥‥夜食、サンキュ。」
「どういたしまして。」





三上が喜んでくれるの、好きなんだっていう渋沢の笑顔。





いい加減、俺もコイツの笑顔が、どうしようもなく好きなんだよ。チキショウめ。











「いい加減にしろなんて、それはこっちの台詞ですよねぇ。辰巳先輩。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥胃が痛い‥‥。」




end.(06.07/2003)

三上が渋沢に甘えているように見えますが、どっちかというと渋沢が三上に甘えているのですよ。

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