理屈屋に、恋をしている。
「何か飲む?」
「水。」
「水は売ってないから、ニアウォーターな。」
「‥‥む。」
ガタン、とけたたましい音を立てて自販機から吐き出された、薄い味のスポーツ飲料を投げ渡す。空を切って飛んだそれを苦もなくキャッチする様が不自然でないのは、GKというポジションが板について証拠かな、と理由もなく思った。
「なに、不服?でも水は売ってないから、それに一番近そうなモノっていったらこれしかないし。仕方がないよな、違う?」
「‥‥別に、不服ではない。」
プシ、とエアの抜ける音に紛らせるように、そんな返答が返る。
俺は自分の為に買った炭酸飲料を取り上げながら、その声を聞く。
そうだね、不服はないだろう。
だって、物理的にそれは仕方のない選択だから。
理に適った、無理のない選択だから。
そういうのに、逆らえない。理屈屋だから。
コクコクと、大人しく俺が買ってやったスポーツ飲料を飲んでいる。
体格差の関係上、並んで立った場合はどうしても俺は見上げる体勢になるのだけれど、このアングル、実は結構嫌いじゃない。
コイツにも、誰にも言わないけれど。
日差しに眩しげに目を眇めているのとか、呼び声に、すっと下げてくる視線とか。何ていうか、酷く‥‥うん、喉が渇く感覚。に、似てる。
‥‥そう、例えば今みたいに、飲み物飲んでる喉元とかも。
そそられる、っていうの?
理屈じゃない、衝動。情動。
無意識に息を呑まされる、そういうの。
「‥‥ちょっと、そっち飲みたい。欲しい。少しくれよ。」
「いいぞ。」
息を呑まされる。‥‥触れてみたくなる。そういうの。
「ッ!何をす‥‥っ、」
「何って、ちゃんと承諾は得ただろ?いいぞっていったの、不破だぜ?」
「‥‥‥‥っ、」
ちゅ、と最後に音を立てて離した甘い唇に、キスの距離で言葉を紡ぐ。
ニッと笑いかけながら、引っ張りさげた襟元にもう一度キスを。
「あまいの。」
「‥‥飲みたいといったのは、椎名ではないか。」
「そのとおり。甘いって言うのはタダの感想だよ、飲みたいといったからには感想のひとつでもつけないと理屈屋の不破は納得しないかなと思って言っただけ。」
違う?と目線で言いながら微笑めば、ほら、もう何も言えやしない。
理屈屋に、恋をしている。
さぁ、次はどんな理屈で丸め込もうか?
end.(09.25/2003)
椎名親分は理詰めで不破に勝てる数少ない人物です。更には感情論でも勝てると言う非の打ち所のないお方です(笑)男前親分。
因みに並んで歩いているところを、無理やり襟元ひっつかまえてキスしてるのですよ。色気のないキスが似合う椎名不破。ウチの椎名親分にはお色気だのムードだのが足りませんな。
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