踊るような足取りを見ながら、ゆっくり歩く。
ふわりと浮いた白い息は、踊るように夜色の空に、ゆっくり高く。
微笑むその人は、ゆっくり歩く。
「ところで三上先輩」
「んー?」
「寒いんですけど。」
「んー。」
返事にならない返答に、ついたため息も白く、高く。
華麗なステップで振り返った、笑う先輩の指先も白くて、なんだかな、と思う。
寒いのは嫌いだと、思う。
「まぁそういうな笠井、コンビニには熱いおでんが待ってるぜ。こんくらいの寒さがなんだというのだ!」
「寒さに指先まで真っ白にしたひとに言われたかありません。ていうかなんで語尾がオペラ口調なんですか」
振り向きざまピッと突きつけられた白い指先をむにっと摘めば、笠井のクセに生意気だ!といわれた。どんなジャイアニズムだ。
「先輩、寒いです」
寒いのは嫌いだと、思う。
思うっていうか、はっきりきっぱり大嫌いだ。
「冬だからな」
理由にならない理由を言って、指先をつままれた先輩は、けれどそれでも笑った。
身体の先端をほんの少しだけ触れ合わせたまま、踊るように見事なターンを披露して。
笑った口元から白い息は、ふわりと夜の空高く。
ため息をついたら、それも空に昇っていく。‥‥ああ、もう、全く。
「先輩、さっさと行ってさっさと帰りましょう」
「何言ってんだよ、せっかくの夜デートくらいゆっくり愉しもうぜ?」
‥‥‥‥ああ、もう、まったく。
踊るような足取りを見ながら、ゆっくり歩く。
ふわりと浮いた白い息は、踊るように夜色の空に、ゆっくり高く。
微笑むその人の手を握り締め、大嫌いな寒空の下、ゆっくりゆっくり、歩く。
指を絡めた手のひらがあったかくて、一瞬で身体中に伝播した熱に、眩暈がしそうだと思った。
寒さと愛しさにくらくらするから、ゆっくり歩こうと、思った。
title/『ルピナスルート』
end.(2007.01.07)
Lupinas:ルピナス 昇藤(のぼりふじ)とも
花言葉は『あなたは私に安らぎを与える』