ゆっくりと、育っていったと思う。
とはいえ出会ってからこちら数ヶ月という期間を考えれば、さほどゆっくりでもないんだけれど。うん。
でもまぁ、世間でいうような運命的な何かとか、そういうのはなかった気がするんだ。‥‥出会いは強烈なシチュエーションではあったけれどね。
だから、たぶんゆっくりと、育っていったのだと思う。

この、想いは。




「きみが好きだ」




そう言葉にすることができて、どこか安心した。おかしな話だけれど。
ゆっくりゆっくり育っていったこの思いの、行く末だから?何かおかしな言い方かな。でも、そうなんだ。
言葉に出来て、よかったと思っている自分が、居る。
だって、ゆっくりと育ったこの気持ちは、もう俺の精神の深いところまで根ざしてしまっていて、到底引っこ抜いて根絶やしにしてしまうことが出来そうにないから。
なかったことには、出来ない。
この想いが、育つことを阻止できなかったみたいに。

本当は、こんなのおかしいことだと思うのに。
目の前で一言もないままに俺の告白を聞いてくれてる姿に、すまないとさえ思う。
我が侭でごめんね、なんて。




「答えは直ぐじゃなくていいんだ、ゆっくりでいいから」




この告白に応えを求めるあたり、俺も結構図々しい。
そういえば三上にもよく「テメェは押しが弱そうに見えてバカッ強ェよな!」と嫌そうに言われてたな。すまない三上、失礼なこと言うなとかって笑顔で殴って。お前の言うとおり、俺は図々しかった。
けれど、図々しいなりに遠慮もしておこうかとか。
だって、図々しい俺でさえ、こんなふうにゆっくりと想いを育てていったのだから。
目の前に居る、このコに答えを直ぐに求めるなんて、さすがに。

‥‥ゆっくりでいいんだ。でも、考えて欲しい。

‥‥‥‥違うか。ゆっくりがいいんだ。俺が、執行猶予が欲しい。

(ああ、やっぱり俺は我が侭で図々しい)




「ただ、俺は不破のことが好きなのは覚‥‥」
「渋沢、お前さては、バカだな」




‥‥‥‥‥‥‥‥。

いや、本当にこのコは出会いからして強烈だったけど(なんてったって他校に不法侵入だ)、こうして対峙するときさえも強烈だと思う。いっそ感動するね。
まぁ、そういうところが好きというのか。
そういうところさえ、好きというのか。

綺麗な姿勢で、凛とした視線で。




「俺はお前が好きだ。‥‥ゆっくりなど考えていたら俺が苦しくて死ぬ」




‥‥‥‥ゆっくりと育ったこの想いの結末は、光速リターンで決着した。
思わず笑ったら、大体お前が呑気すぎる、と心の底から苦い顔で言われてしまって、やっぱり可笑しくて笑った。









ゆっくりと育ったこの想いは、今後せっかちなこのコとちょうど良いスピードで育っていくのだろう。







title/『低速違反取締月間』
end.(/2005)

呑気なキャプテンと一刀両断な不破(笑)
テレつつ可憐に頷く不破も勿論好物ですが、どーんとばーんと雄雄しく(可笑しく)
光速リターンな(高速通り越してる)彼もいいと思います。
足して割ったらちょうどいいスピードになる。
法定速度50km/hの道を20km/hで自分の前を走られて、何故この速度で走るのかと
後ろを走りつつ考察するタイプの不破です。




back