格好つけたいお年頃。

さして好きでもないコーヒーを、ブラックで飲むとか。
自分だって寒いのに、手袋貸しちゃったりとか。
僕らはそういうお年頃。
そうじゃない?




「思いません?」
「思いまセン。」

素っ気無い言葉に、むー、と唸り声だかなんだか判然としない声を上げる。
ブンブンと腕を振り回したら、首に引っ掛けていたマフラーが、うっすら雪を纏ったアスファルトにゆっくりと落ちた。

「もー、センパイってばわかんないかなァこのオトコゴコロ!」
「解りまセン。」

夜色のしじまに響く、金属の擦れ合う高い音が2度。
吐く息の白は、薄明るい自販機のライトアップと溶け合うようにして、静かに静かに消えていく。

「ホラよ。」
「あ、どもッス。」

身をかがめて取り出したそれを、その体勢から上に向かって投げるように渡された。ゴチです、と言ったらアホか120円出しやがれ、と下方から声。

「‥‥大体オマエ、ブラックのコーヒーなんか飲んだことねーだろ。」
「ゔ‥‥ッ。」

手元にあるのはミルク多めのカフェオレ。
呆れたような目でこちらを見てくる人の手にあるのは、

「ッだってブラックなんて苦いッスよ!なんで飲めるんですかそんなのーッ!」
「飲めねェオマエのお子様な舌に訊け。」

そう言って、平然とブラックの缶コーヒーを飲む姿に、ちぇーっだ、と小さく舌打ちしてカフェオレの缶を開ける。
プシ、とエアの抜ける音が、やはり夜の闇に溶けるように消えていく。

「貸すも何も、オマエ手袋持ってねぇし‥‥。」
「え、だって俺手ェ冷える事あんまないし。」
「‥‥‥‥‥‥。」

微妙な沈黙の後、ため息をつかれた。

でも、ブラックのコーヒーなんて飲めないし。
冷たそうなその指先に、貸してあげようにも手袋持っていない。

「‥‥‥‥むー‥‥。カッコつかないなぁ‥‥。」
「‥‥ッたく、仕方ネェなぁっ。」
「は?」




深く静かな夜色の視界を、不意に攫ったのはその人の白い肌と、




「‥‥苦ッ!」
「ぁあ?缶コーヒーのブラックなんざ苦いうちに入んねぇんだよ、オコサマ。‥‥ホラ、手ェだせ。」
「?」
「体温高いオコサマは便利だな。」
「‥‥‥‥‥‥。」




てのひらから伝わる、その人の体温。冷えた指先。




「‥‥‥‥センパイが体温低すぎなんでしょ。あ、これがホントの冷血動物ッスね。理科で習ったなー。」
「テメェ‥‥。」
「うわっ、ちょ、ストップストップ!コーヒー零れるッ!」




それでも繋いだ手を離さないで。




「‥‥センパイはオトコマエっすねぇ。」
「今ごろ気づいたか、バカ代め。」
「もーちょっと手ェ繋いだままでいいッスか?」
「離したら寒いだろうが、バカ。」
「はーい。」




格好つけたいお年頃。

ブラックのコーヒーを飲める舌も、貸してあげる手袋も持ってはないないけど。




「あ、高い体温はあるから手袋代わりってことで。」
「ハイハイ。」
「寒いといけないから、俺ずーっとセンパイの近くに居ますねッ。」
「‥‥ハイハイ。」




温かなてのひらと、温かな想いをその身体いっぱいに持っている。




彼らは、そういうお年頃。




end.(11.10/2002)

中学生っぽくを目指したお年頃シリーズ第一弾。(シリーズ?)
三上は年上としてカッコよくあろうと頑張ってて、フジは三上センパイの為にオトナっぽくカッコよくしよう!と頑張ってるわけです。そんな二人は結局可愛いんだけどね!(笑)