触れた指先に温度がなくて、びっくりして一瞬離したことがある。
そうしたら、もっとびっくりした顔で三上が見返してきたモンだから、俺はもっともっとびっくりして思いきり手を握り締めたんだっけ。
「体温が、同じくらいなんかな」
「だねぇ」
薄いタオルケットに二人包まるように寝転がって、静かな声で話す夜をどれだけ過ごしてきたのか、そんなこともう覚えてない。
先ほどまでの接触で、少ししっとりした感じの手のひらが裸の胸辺りをさわさわと撫でてくるものだから寝るに寝れないんだけれども、それもまぁいいかなとか。
冷たくも熱くもない指先は誰よりも慣れた感触、それは触ってくる幼馴染みにとってもそう。推定じゃなく断定。
だって、そうやって二人で過ごしてきたから。
「ま、体温なんざそんなに幅があるっつーモンでもない気するけど」
「そんなことないって、全然違うって」
胸から鎖骨、首筋を撫ぜてきながら喋る三上の、その手のひらを掴んで反論する。
「渋沢とか指先は冷えてるけどその実かなり体温高いみたいだしー、藤代は寄ってこられるだけでなんか放射してるし」
「ふは、なんかってなんだよ」
「えー、何かこう‥‥なんか?」
答えンなってねぇよなんて、少し掠れた声で笑う三上は小刻みに身体を震わせていて、掴んだ腕ごと全身で懐くようにすり寄ってきた。笑わせるつもりじゃなかったんだけど、とは言わないでおいた。
今はさらりとした素肌の感触。
身体を触れ合わせての会話は、声が直接身体に響いてくるみたいだ。耳で聞いてるってより、全身で吸い込んでいるような。
同じくらいの体温、一緒に過ごしてきた時間。
一つになったと錯覚する一瞬。
「三上‥‥アキ?寝ちゃった?」
「‥‥‥‥ん‥‥、」
笑いの余波は次第に深くなっていく息に吸い込まれるように収まっていく。
微かな応えは殆ど寝息で、肩の外あたりに当たる呼吸がくすぐったい。
ほんの少し身動ぎして、身体を寄せなおした。
繋いだままの手のひらはやはり同じ体温なのか、温度がないように感じた。
「アキ」
本格的に寝入ってしまったらしい三上の余計な力が抜け落ちた手のひらを、一瞬だけ握り締める。手のひらが擦れあって、衣擦れにも似た音を立てた。
その音に、ああ、別々のものなのだと、妙に感慨深く思った。
あの時一瞬離した手、一度離してしまったらもう取り戻せそうもない手を、
今はまだ、握ったままでいようと思う。
title/『ユアハンズ』
end.(11.20/2005)
幼馴染み。別々だからこそ愛しいね。
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