ウェルカム、ようこそ、ようこそ我が家へ。あなたを歓迎します。
可愛い家だ。
郊外の、見晴らしの良い小高い丘の中腹あたり。
隣家はなくはないけれどずっと離れてて、例えば日本の基準なんかだと「お味噌も塩も借りに行けそうにはない距離ですね‥‥」って感じだ。
殆ど私道の、舗装されていないけれど丁寧に慣らされた土の道。縁にはメイプルツリーやポプラやリンゴの樹が植えられてる。
緩い坂道を登りきれば、間伐材を組んだ素朴な柵、クラシカルな鉄製の門とポスト。素敵だろ、ずっと昔にフランスさんが建ててくれた家から移設したんだ。そう言って笑っていた。君のお気に入り。
柵の内側は眩しいほどの緑の庭。手入れ知らずのように見えて、きっちり計算づくの庭らしい。ベリーやグミ、たくさんのハーブ。それから、薔薇。
庭も建物も広くて大きいけれど、屋敷と呼ぶより、家っていうほうがぴったりだね。素朴でのんびりしていて、可愛らしい。そう、君らしい。
玄関ポーチの横には古びた木製の卓。
その上、ちょこんと添えられてるのは来訪を歓迎するウェルカムボード。あたたかみのある木製。
メイプルリーフの形をしたボードには、来訪を歓迎する言葉と小さなメイプルリーフとシロクマが描かれている。可愛いだろ、あの人がプレゼントしてくれたんだ。そういって笑っていた。君のお気に入り。
とても可愛い家だ。
ウェルカム、ようこそ、ようこそ我が家へ。あなたを歓迎します。
「歓迎なんてしなくていいよ」
可愛い家。
君の大好きな彼のため、いつだって可愛く素敵に整えてる。
「歓迎なんて、しないでおくれよ」
可愛い君。
君の大好きな彼だけを、いつだって一途に、愛してる。
今、ドアをノックしたなら。
きっと君は、晴やかな笑顔だ。そうしてこう言うんだろう?
‥‥いらっしゃい、ようこそ兄弟。よく来てくれたね!
そうしていたら、彼がひょっこり顔を出すんだ。
‥‥よく来たなアメリカ、紅茶でもどうだ?
ウェルカム、ようこそ、ようこそ我が家へ。あなたを歓迎します。
ゆっくりと踵を返す。可愛い家を、後にする。
可愛い君、歓迎なんてしないでおくれ。
可愛い家は、すべて君の大好きな彼を迎え入れる為。
俺の愛する可愛い君は、すべて君が大好きな彼のもの。
サウダージェ
the end.(2008.11.12)
憧れていた 美しい光景
いつか迎え入れられると その腕に
いつか届くと この想いが
夢みていた 夢を みていた
(もう叶わないと 知った今でさえ)