「その、ごめんな?」
それは、彼の常套句で。
「いいですよ、気にしてないです」
これが、僕の常套句。
この二言で僕らはいつだってハッピーでスウィートなエンディング。
‥‥って言ったら案の定、僕の兄弟はものすご〜く!渋い顔をしたのだけれど。
まぁ、それも当然かもね。ある意味アメリカも、関係者だし。何だかんだ言ってアメリカは、僕のことも、そしてあのひとのことも、大好きだからね。
「まったく君は、なんであんなヤツがいいのさ?」
ああ兄弟、まったく同意だよ。
「あんな、恋人と俺の見分けもつかないひとなのに!!」
涙目で怒ってくれる君は、とってもいいヤツだね。
大好きだよ兄弟、ありがとう。でも、聞いておくれよ?
「‥‥うん、でも、いつも謝ってくれるし」
バツが悪そうにお詫びと言っては僕の好きなものを買ってくれたり、ブーケやグリーティングカードをプレゼントしてくれる。刺繍や紅茶だったこともあったかな?あとクマ吉さんにつけるリボンとか(まあクマ衛門さんには嫌がられたからベッドサイドに飾ってみたんだけど)。
「悪気があってしてるわけじゃない。いいひとなんだよ」
「でも!」
なおも言い募ろうとするアメリカに、にっこり笑いかける。彼の大好きな僕の笑顔。でもこの笑みって、実はイギリスさんの笑みをお手本にしてるって、きっとこの兄弟は気がついてないね。‥‥うん、そういうところも、可愛くって好きなんだけど。
「アメリカ?」
「う‥‥、」
ほら、くちごもった。
可愛いねアメリカ、ごめんね意地の悪い兄弟で。
ああ、あのねアメリカ?君には決して言わない、秘密のことなんだけど。
僕だって、一度、すごく怒ったことがあるんだよ。
『なんで間違うんですかなんで僕って気づいてくれないんですか、僕はアメリカじゃない、僕の名前はアメリカじゃない!僕は、僕は貴方の恋人じゃないんですか?!』
‥‥うん。もう随分と前のことなんだけどね。自分でもあの時、なんであんなに許せなかったのか、もう覚えてないんだけどさ。でも、ともかくあの時は本当に、本当に彼が許せなくって、苦しくって、腹が立って仕方が無くって。泣いて泣いて、わめいて、なじって。
それから、彼をひっぱたいた。
うん、そりゃあもう、力いっぱい。我ながらもうちょっと手加減してあげなよイギリスさんかわいそうだよ!って思っちゃうくらいには、ものの見事に、クリーンヒット。うん、もの凄く痛かったと思うよ。
でもね、彼はなにも言わなかった。
おとなしく僕の平手も罵倒も全て受け入れて、謝罪した。あの彼がだよ?!
知ってのとおり、イギリスさんは滅多に謝らない。
まあフランスさんとか、僕やアメリカなんかもそうだけど、謝るっていうのは、負けを認めることだからね。不用意な謝罪は、余分な負債まで呼び込んじゃうことがあることもあって、容易には謝らないのが慣例だ。
それじゃなくてもイギリスさんは口が巧いしそれを差し引いても意地っ張りっていうか、素直じゃないひとだから、‥‥うん、だから、あの素直さに、さすがに虚を突かれた、っていうか。
ごめん、って。
俺が悪い、って。
そうして。
『お前がアメリカに似てるっつーか、アメリカがお前に似てんだよ』
‥‥って。
『髪の色が似てるとか肩の感じがにてるとかで、アメリカをお前に間違えかけてるんだ、本当は。‥‥お前にはなかなか会えねぇし、会いたい会いたいと思ってるとどうしても見間違う。勿論アメリカはアメリカでお前じゃないから、一瞬後には空しくなる』
『カナダって、呼びかけて間違えたらどうしようもないくらい空しくなる。絶対に。それなら、アメリカって呼んで違うよとお前に言われるほうがいい。お前だって、二倍嬉しくなれるから』
『お前が怒るのも当然だし俺が馬鹿なのも確かなんだけど。‥‥それに「カナダ」って間違えたら、俺がお前のこと好き過ぎなのがあんまりにあからさまっていうか‥‥、お前に会いたくなるし、ってどうしたカナダ、顔が赤いぞ?!』
‥‥どうしたも、なにも、さぁ。
赤くなるなっていうほうが無理だと思わないかい?本当にもう、どうしたらいいかっていうか、どうしようもないっていうか!
そうだよ、本当に、どうしようもない人だよね!イギリスさんてば!
うん、だから、そんなに怒らないでおくれよ兄弟。
だって、ね。僕は、やっぱり。
「イギリスさんのこと、好きなんだ」
「‥‥仕方がないなぁ、君は」
大きく肩をすくめて、ため息をついた兄弟に僕は笑う。
ありがとう兄弟、そ‥‥の心配、嬉しいよ。
でも、大丈夫だから。でも、好きだから。
「仕方がないよね」
彼も、僕も!
その後、アメリカとわかれてトロトロ廊下を歩いてると、携帯電話が鳴った。誰からか、なんて着信名をみるまでもない。
「ハロー、なんですかイギリスさん?」
『あ、うん。‥‥えっと、‥‥何か欲しいもんとか、あるか?』
「今すぐ好きだって言って」
『愛してる』
即座に返ってきたストレートなプレゼントに、僕は笑って今すぐ会いに行くから抱きしめて!って返したものさ。
まあ、さすがにこれで呼び間違えられたら平手じゃなくって拳かな?なんて不穏なことも思っていたけれど。
うん、平手も拳も出す前に抱きしめられたから、もう、仕方がないな、なんて。
そうして仕方のない僕らは今日も、ハッピーでスウィートなエンディングを迎えたってワケさ!
仕方のない僕らのハッピースウィート
the end.(2009.03.07)
ブログ再録
英加ってより北米兄弟。
兄弟への仕打ちにイギにイラッとくるメリカはいい子。