「‥‥ 、」
急な覚醒はいつだって酷く消耗する。息さえ止まりそうなほどに。
自分の寝言で目を覚まして最初にするのは、いつだって暗順応した目で室内の輪郭を捉えることだ。
夜に色を吸い取られた室内はとても綺麗なモノクローム。まるで最初から色彩などない世界のように、淡々と、僕を包み込む世界。
様々なものを削ぎ落とし、捨て去って、そうして調和した世界を作り上げている。美しい、素敵な世界だ。
けれどそれは、期間限定。ほんのひと時だけの。
だって、ほら。
「‥‥ん‥‥起きたの、?」
「はい」
伸ばされた逞しい腕が僕の裸の胸の辺りを這って、それからとろとろとした動作で、優しく抱き込まれた。
体温。それは、世界の彩り。
「まだ、もうちょっと、寝ようよ‥‥」
「‥‥はい」
ほとんど寝言の言葉に素直に頷いて、耳元、すぅと息が深くなるのを、僕は息をひそめて聞く。
体温。寝息。それは、世界の彩り。
抱き込まれた腕の中から、遠くなったモノクロームの世界を見渡す。
様々なものを削ぎ落とし、捨て去って、そうして調和した静かな世界。
「でも、あなたが居ないから」
その場所は僕の世界たり得ない。
合わせられた素肌越し、体温。寝息。鼓動。
僕の世界を彩る、全て。
ゆっくりと息を長くして沈んでいく意識の縁で、貴方を想う。
「フランスさん、」
貴方の名を呼ぶ。
「‥‥フランスさん」
貴方だけを、ひたすら。
ああ、再び世界に彩が戻るときには、貴方が僕の名前を呼んでくれたならいい。
暁の前に微睡み、汝が名を
the end.(2009.03.01/2009.07.02修正)
神様の名を呼ばぬ時は
お前の名を呼んでゐる
八木重吉『ノオトD』より
ぼくのかみさま。雰囲気小説サーセン(・∀・)