その日、とある場所でとても緊張感のない闘いが繰り広げられていた。
「‥‥‥‥‥‥。みっ」
「むー。‥‥むっむー」
「みっ!」
ぽよぽよと揺れるそれは、白い手のひらサイズだ。
少々下膨れなのは重力に従った結果なのだろうが、可愛らしい鳴き声(?)にあわせてそのふにふにした球体がぴょこぴょこ跳ねたりむいむい揺らされたりしている。
「むー!じゅてーむ!むー!」
「みっみっ!みー、みっ!」
「じゅってーむっ、しるぷぶっ‥‥む!」
「みーっみっみ♪みー!」
「むー‥‥っ」
ぽよぽよ。ふにふに。ぽっふぽっふ。むいむいむい。
緊張感が、ない。欠片もない。
否。
対峙している彼らは、至極本気だった。本気中の本気だ。果し合いだ。世紀の決闘だ。メインイベントで千秋楽でデスマッチだ。格闘技大好き国家リトアニア辺りならテレビ中継くらいは入ったかもしれない、注目の大一番なのだ。
「みっみっ、み!」
「しるぶぷれっ!むー!」
人語を操らない彼らの闘争の理由は謎である。
謎ではあるが、とりあえず彼らがその緊張感の欠片もないほんわかした容姿のまま、これ以上なく張り詰めた決戦の舞台にいることは、まぁ、解るような解らないようなむしろ解りたくないような、だって可愛いし和む光景だし。‥‥いやいや、いや。
ともかくそうして、むいむいむいむい互いを牽制しながらも、やぁやぁ我こそは、いざ尋常に、勝負、勝負!‥‥といった、その矢先。
「こーらーぁ。何してんだよお前はッ!」
「あっ、もう駄目じゃないですか、どこに行ったのかと思えば‥‥」
ひょい、と対角方向から、白く綺麗な指が2つ伸ばされ。
むーい、とエキサイト中の白くぽよぽよした小動物を、摘み上げた。
「みっみっ!みー!!」
「ああもう、うるせぇぞ静かにしろッ。大人しくしてるっつーから議場に連れてきたんだぞ?!」
「じゅてーむ!しるぶぷれっ!むー!!」
「もう、普段はのんびりしてるのに、何でそんなにあのコとだけ仲が悪いんですかぁ‥‥」
「みー‥‥」
「む、む、‥‥ぅ」
飼い主に、片や怒られ、片やため息をつかれ。
異なる白い手のひら上、けれど乗せられた白いもにもにしぷもぷもした生き物の、反応は、とても似通って。
ぺしょりとそれぞれの飼い主の手のひらの上、白い身体をしょんぼりとヘタたせて小言を聴く姿は、やはりどれだけワガママでもイタズラでも、愛らしい。
「‥‥ほぉら、ケンカなんてしてねぇで、大人しく俺のポケット入ってろ。な?」
「帰ったらキャベツいっぱい切ってあげますから。フレンチドレッシング、好きなんだよね?」
甘い、甘い声で飼い主達が、白い生物に言い聞かせる。
あたたかなポケット。ときどき顔を覗かせれば、笑いかけて指先で撫でてくれる。
おいしいキャベツ。一緒にマーケットに寄って、どれがいい?なんて甘い声で囁いてくれる。
「ん。よし、いいコにしててくれよ?な?屋敷に帰ったら、一緒に寝てやるから」
「ふふ、もうすぐ会議も終わるから。そしたら一緒に帰ろ?ね?あ、お風呂入ろっか、一緒に」
そうして、飼い主達の甘い、甘いキスを、貰えるから。
「みー‥‥」
「じゅてーむー」
ふにふにとした白い生き物たちは、それぞれの愛しい愛しい飼い主達に擦り寄って、全身で愛情を、表現するのだ。
「‥‥‥‥なぁアメリカ、アレ、お兄さん的に最ッ高にムカつくんだけど。いやお前似の白い何か可愛がってるイギリスは最ッ高に可愛いわけだけどね?でもお兄さん、世界の超大国様似の何かは切り刻んでフランス特製ソースぶっ掛けてオーブンで焼き上げたいっていうか」
「あははフランス、たまには気が合うね、俺も同じ気持ちだよ!‥‥ヒゲ小動物の分際でヒゲ小動物の分際でヒゲ小動物の分際でていうかUMAの分際で俺のカナダに擦り寄るとかいい度胸じゃないか、Mの字のバンズに挟んでピクルスとレタスで一口とかダメかな、はは、は‥‥」
『今日はもち(達)の機嫌がよくないから、帰る。』と。
あっさりきっぱり朗らかに、夜景の綺麗なホテルでの夕食+ベッド上の甘いお食事の予約をキャンセルされた人型の二名はといえば。
行き場を失ったレストランの予約とホテルのインペリアルスウィートとその他諸々のヤル気をもてあまし気味にしつ二人肩を並べて、陽気なバーでこの上もなう険悪に、角突きあわせていたとか、いないとか。らしい。
「ッくそ、だいだいフランスッ、君があんなものカナダに寄越すから‥‥っ」
「それを言うならアメリカお前だって持て余してママンに押し付けたんだろうがよ?!」
「な?!マミーなんかじゃないぞイギリスは!!君にとっては俺のカナダは子どもだろうけどさ?!ていうか兄弟に手ェ出したら潰すよ」
「ハッ、言ってろクソガキが。なーぁにが俺のカナダだまだ最後までヤッもねぇくせに!」
「うううううるさいな!!言っとくけど、イギリスは今でも君より絶対俺の言うことのほうを優先するからね。つまり君は俺以下ってことだからな?!」
「あああああ言っちゃう?!!それ言う?!もう俺が一番気にしてるところに岩塩突き立てるとかどういうこと?!とことん躾のなってねぇガキだな!」
こちらの闘いが、緊張感ある勝負だったかどうかは、定かではない。
the end.
ブログログ。これもお勉強会で頂いたおかわりリクです^^
ありがとうございますー!