(ねぇ君が、ひとりで泣いているのを、知ってるよ。)
「それじゃ、今日は帰るぞ」
「うん。ああ、玄関まで送るから」
カナダの家の玄関には、鍵が掛けられている。
当たり前のようだけど、昔はあけっぱなしだった。
けれど、鍵が掛けられるようになった。
理由は知ってる。彼が、言ったからだ。
『ちゃんと鍵はかけろ』
『俺は、もう傍には居てやれないんだから』
そう言って苦笑した彼へ、穏やかに笑った君は、
はい、イギリスさん。なんて。物分りのいい笑顔。
(でも君が、ひとりで泣いてたのを、知ってるよ。)
ずるいよ。
それまでだって、いつも一緒に居たわけじゃないのに。
むしろ、俺のほうこそ一緒に居たのに。
ずるい。
『鍵なんてかけなくていいよ』
『俺が、ずっと傍に居るじゃないか』
そう言ったなら、君は穏やかに笑って言うね、
ありがとう、アメリカ。なんて。俺を甘やかす笑顔。
(でも君は、ひとりで泣くんだね、知ってるよ。)
カナダの家の玄関には、鍵が掛けられている。
あの日からずっと、約束どおり。
鍵をかけて、彼を。彼だけを、待っている。
「Bye、兄弟。またきてね」
「‥‥ああ、カナダ。また、くるよ」
カチリと鍵の掛けられる音を、背中で聞いた。
(ああ君は、ひとりで泣く俺を、知らないね。)
『cry/alone』/the end.(2008.11.24)
米→加『サウダージェ』と英加『A Day In The Lovers Life』のプロット