イギリスは彼女の父であり、兄であり、そして母親である。
「あ、あの、イギリスさん。その、相談したいことが、あるんです」
「ん?」
折りしも英国は、少し早めの和やかなティータイムを迎えていた。
卓上にはアボカドとモッツァレラのサンドイッチにヴィクトリアサンド、茶器と銀器は伝統と格式ある自国工房のセット、茶葉は馴染みの店が誇らしげに薦めてくれたブレンド。美しいカットの施されたガラスの小瓶には、ふんわり甘い香りのメイプルシロップ。
そして隣りには、それ以上にふんわり甘い匂いの柔らかな身体をした、大切な大切な、イギリスの身内の姿。
ソファの縁にそうっと細い腰を乗せるように座った彼女は、白く柔らかそうな両の指先をきゅっと絡め合わせて品良く揃えた膝の上に置き、やや俯き加減になっている。やや赤みの強いふわふわとした金髪は後ろで緩く編んで束ね、着ているのは華奢な身体のラインをやんわりと消す、少し古風なミルクカラーのワンピースだ。
素朴なオールドローズのつぼみにも似た可憐さと愛らしさ、しかし男達の目を惹かずにはおれない清純だからこその色香。その二つを無理なく持ち合わせた彼女に、イギリスは彼女へと向けた毅然とした面持ちとは裏腹に、内心では机にうつ伏せバシバシと拳で叩きたい衝動に駆られていた。‥‥ああ、可愛すぎる!
「どうした?カナダ」
厳格な父として、或いは強い兄として。長の年月大切に育ててきた、いわばその結果が現在の美しい彼女の姿だとするなら、これほど鼻の高いこともない。
元気が良すぎる天下のKYな元弟をみるにつけ、自分は子育てには向いていないのでは‥‥と真剣にヘコんだこともあるイギリスだが、片やその隣りで一緒に育てた彼女の楚々とした愛らしさに触れるたび、いやいや、俺も捨てたもんじゃないだろうと思い直す日々だ。
「えっと‥‥あの、」
「?」
カナダはちらちらとイギリスを見てはまた俯き、を繰り返している。
森の湖水のような色をした瞳は髪よりやや淡い金色の睫毛にびっしりと縁取られ、瞬きするたび頬へ淡い陰影を落とす。何事かを逡巡する姿はとても可愛いのだが。
「カナダ。言いたいことはきちんと主張しないとダメだぞ。それじゃなくてもお前、アメリカの隣にいるせいで薄いんだから」
「う‥‥」
少々、箱入りに育てすぎたか。
アメリカと派手な喧嘩別れを経験して以来、イギリスは北米においてカナダを唯一の身内として、大事に教育をしてきた。そして、カナダが女の子であったという点を考慮しても、イギリスは少しカナダを大事にしすぎた、とも考えていた。否、大事にするのは当たり前なのだが、あまり外交や軍事、憚られる交渉事を表立って彼女に任せてこなかったのだ。
今となっては立派な主権国家として立つ彼女だ、そういった交渉の席でも上司と共にきちんと事をこなしているのだろうが、如何せん外交や戦略は、経験値が物を言う部分がある。
己の意志を、主張すること。
相手の力量を見極め、どの部分を切り捨てどの部分を守り抜くかを相手よりも一歩早く判断すること。
経験によってスキルアップさせるべきこれらを彼女に学ばせなかった点では、イギリスは未だに失敗したと密かに悔やんでいた。厳格な父として強い兄として、或いは優しい母親としてそばにあった頃は、小さな身体の彼女をつい庇い、ついつい手や口をだしてしまっていたのだ。それでも、独立が決まった時点で、出来る限りの事は伝えてきたのだが‥‥。
「イ、イギリスさぁん」
「うん。‥‥ああ、わかったから。ゆっくりな?大丈夫、俺がついてる」
‥‥とはいえ、可愛いのだ。ともかく。
可愛い可愛い、妹であり、娘なのだ。幼い頃は兄弟とともに自分の足元に纏わりつき、少女時代は可憐な仕草と敬愛の眼差しで持って自分を見上げて来た。そうして長じて後、独立後もこうして緩やかな身内として、平和な一時を共にしている。ついつい甘くなっても仕方がないだろうと、誰にともなく主張したくなるイギリスであった。
そして、そんなイギリスの甘い声に励まされたのか、カナダは膝の上に絡め合わせて乗せていた両の手をもう一度握りあわせたかと思うと、何かを決意した眼差しでイギリスを見遣った。愛らしい桜色のふっくらとした唇を、一度だけきゅっと噛む。‥‥ああ、可愛い唇に痕がつくから止めろと昔から言っていたのに。
と、そんな父親だか兄だか母親だか、はたまたそれ以外だか微妙な心配をイギリスはしながら、けれどそのカナダの真剣な眼差しに応じるべく、凛とした視線を返した。
桜色の唇と、うっすら赤い頬、そして少し潤んだようにも見える目。
「あのっ、イギリスさん!」
「あ、ああ、なんだ?」
‥‥いかん、俺が慌ててどうする。カナダは、俺の妹であり娘は俺を身内として頼ってきたのだ、ここは自分がどーんと構えて、相談事に乗ってやるのがセオリーだろう。落ち着け俺。
何気ない風を装いつつ、そんな風に己へと自己暗示めいた言い聞かせをしたイギリスは、手元に持ったままだったソーサーからカップを優雅に(と、カナダに見えるように)取り上げ、一口紅茶を啜った。そして。
「‥‥お、おっぱいのサイズが、よく判らなくって、下着が合わないんですぅ‥‥!」
「ッ!!!」
イギリスは、人生(国生?)始まって以来、初めて紅茶を派手に噴いた。
‥‥まぁ、アレだ。俺はカナダの、父であり、兄であり。そして、母親だったからな。
幼い頃はずっと傍に置いていたし、女性としてのたしなみである料理や家事、詩や音楽、刺繍といった習い事を教えたのは、自分だ。ワルツを初めとする社交ダンスはつきっきりでレッスンしたものだし、現在でも彼女が大好きなドーナツは思えば自分が幼い彼女に最初のおやつ作りとして教えたものだった。
もちろん彼女の身の回り、服や髪飾りや首飾り、その他のアクセサリを用意していたのも、俺だ。うん、幼い頃は柔らかな生地でエプロンドレスを縫ったものだし(フェルトでクマのアップリケもつけた。勿論フェルトも自分で伸して作ったものだ)、実はわりと最近まで丁寧に編んだ繊細なレースを施した夜会服や、彼女に似合いそうな、あー、あまり肌の露出していない洋服(半分くらいは手縫いだ、勿論)を贈っていたのも、俺だ。
父親、兄、‥‥否、これは母親の領域か、完璧に。
「‥‥だからまぁ、俺に頼るのは当たり前なんだろうがなぁ‥‥」
「ふぇ?‥‥えっと、何か言いましたか?」
イギリスさん、と。
こと、と小さな頭をゆるく傾げてイギリスを見上げてくる視線は、とても素直で純朴で、愛らしい。そんじょそこらの男なら、迷わず抱き締めたくなるくらい可愛いだろう。イギリスはそう思う。
勿論、イギリスとて抱き締めてやりたいほど可愛いとは思っている。あくまで、家族としてだ。父として、兄として、母として。可愛い可愛い妹で娘の相談をきちんと聞いて、それの解決に手を貸してやって、そうして安心する彼女を抱き締めてやりたいのだ。
カナダも、それを心の底から解っているからこそ、なのだろう。
「なんでもない。ああ、全部脱がなくていいから。‥‥あれ、鏡どこにやっちまったかな‥‥」
ゴソゴソと引き出しをかき回しながら言ったイギリスに、ふんわりとした、少し甘えた声が返される。
おっとりとした手つきでワンピースの後ろボタンが背中の中ほどまで外され、柔らかいレース仕立てのアンダーウェアも一緒に引き降ろされた。現れたのは、シェルピンクとピーチピンクのミックスカラーにオフホワイトのレースを縫いこんだ可愛い下着に包まれた、ふっくらとした女性特有のライン。
どれもこれも、イギリスの眼前での出来事である。
「‥‥お、あったあった。‥‥ん、この手鏡いつのだよ?えらく凝ってんなぁ。カナダ、これいるか?」
「わぁ!いいなぁ、すっごい可愛い!欲しいです!」
「ん。じゃあ帰るとき持って帰れ」
「やったぁ!ありがとう、イギリスさん!」
精緻な天使の立体モチーフが鏡の縁を装飾している手鏡に、カナダが目を輝かせて胸の前で手を打ち、喜ぶ。
確かにこれは、成人男性の屋敷の引き出しに忘れ去られるよりは、ハイティーンの可愛い女の子の可愛い部屋に置かれていたほうがお似合いというものだろう。
このやり取り自体は、妹を可愛がる兄と兄を慕う妹、という良くあるペアの良くあるやり取り、といえなくもないのだが、実際の光景はちょっとどうよ、というものである。
ほっそりとした白い腕にむにっと潰されて、なおいっそう谷間とそのボリュームを強調した柔らかなバスト。半端に脱ぎかけた服は自らの手で脱がしたい衝動に駆られても不思議ではないどころか当然とさえ思える。華奢な肩、滑らかなラインの首筋から、舐めたならさぞ甘いだろうと思われる鎖骨。相対している相手が恋人であれば、‥‥いや、イギリス以外の男であったなら、即抱き上げてベッドへ連れて行ったところでその男に罪はなかろう。
まあその場にイギリスが居たならば、彼女に触れた時点で呪い発動だろうが(しかも肝心な時に勃たなくなるとか、絶対に暴発するとか、えげつない呪いだ)。
「メジャー、メジャーは‥‥っと。インチじゃなくてセンチの‥‥これか?よしカナダ、いいぞ、こっち来い」
「はぁい。イギリスさん、ブラも取りますか?」
「ん?んー、そうだな、フィッティングでなんとかなるかもだが、正確な数値も欲しいしな」
巻尺型のメジャーを引き出して難しい顔でセンチ刻みの目盛りを確認しているイギリスの傍へと、ほてほてとおっとりした足取りで近寄ったカナダは、その言葉にはい、とやはり事も無げに返事をして、後ろ手にブラジャーのホックを外した。ぷるん、とピンク色の擬音さえ聴こえそうな柔らかな其れが、イギリスの眼前へと披露される。
イギリスは顔色一つ変えずにそのぷるぷると発育の良い胸をじっと真剣に見つめた。‥‥ある意味、この状態で男の視線にいかがわしい色が含まれないほうがおかしいほどの状況なのだが、完璧に母と娘状態な二人には適用不可。
「アンダーとトップの差と‥‥。あ、カナダ。お前ちゃんとブラつけてるってことは、一応測ってはみてるんだよな?カップ数は?」
「えっと、一応E、です」
「そうか。‥‥フィッターのいるショップに行けばいいんだろうけどなぁ」
「だって、近所にそういうところないんですもん。それに、‥‥な、なんだか恥ずかしいし」
少しだけ笑って恥らう姿は、可愛らしいを通り越して目の毒なほどの愛らしさだ。もっとも、イギリスにとってはそれは父として母として、庇護欲を駆られる類の愛らしさ、に変換される。
このような光景をもし仮にアメリカあたりが見ようものなら「君、本ッ気でおかしいよ!?おっぱい前にして何で!?」くらいは言いそうだ。‥‥いや、まぁそうなんだが。でもカナダは俺の娘だし。娘のおっぱい見て欲情するほうがおかしいだろ。
「アンダーはこれでいいな。トップは‥‥カナダ、ちょっと胸、下から持ち上げてろ。‥‥そう、支えててな。あ、内に寄せるなよ。まっすぐ」
「はい」
イギリスの言に従い、カナダのなめらかな手のひらがぷるんとした胸を下から持ち上げる。それにより少しだけ強調された谷間と、周囲より濃いピンク色をしてぷっくりと立ち上がった先の真下を経由し、イギリスはカナダの細い身体を抱きこむようにして背中からメジャーを渡す。ふにっとした柔らかいそれにメジャーを食い込ませないように力を加減しながら、ちょうと谷間のところでメジャーを合わせ、顔を寄せて目盛りを読み取った。
これまたフランス辺りがこの光景をみていたとするならば、「いやそこは!そこは男として顔をうずめるところでしょ!?やーらかい身体は堪能するのが男としての義務だろ!!」とかなんとか言いそうだが‥‥。いやそれは、俺だってデカイ胸は大好きだがな?でもカナダ、娘だから。それにコイツが困ってんだよコイツに頼られてんだよ、ちゃんと協力してやらないと可哀相だろうが!
‥‥と、そこでメジャーをカナダのぷるんとした胸に渡していたイギリスに、不意に疑問が湧き上がった。
「ところでカナダ」
「はい?」
「なんでまた急に胸とか、下着のサイズなんて気にしだしたんだ?」
「え‥‥っ、」
何気ない疑問だった。が、それまでイギリスの視線にも計測にも、欠片も恥らう様子がなかったカナダの頬に、ぽうっと柔らかな赤が広がった。
‥‥‥‥え、なんだその反応。‥‥って、え‥‥‥まさか!!
「うひゃ?!え、イギリスさん?!」
「カカ、カナダ!お、お前まさか、何か‥‥ッ!」
何かっていうか。誰か。
柔らかで瑞々しい素肌にメジャーを沿わせて数値を読み取ろうとしていたイギリスが、いきなりそのメジャーを取り落とすやむき出しのカナダの両肩を掴み、これ以上はないだろうというほどに慌てた形相で、彼女へと迫った。もちろん、性的な意味ではなく。
「な、何か、そのっ、‥‥乳を揉ませる相手がいるとか、そういう、アレか?」
「ふぇ?!ちょ、違っ、違います!」
‥‥紳士にしては些か直截すぎる言い様に、後々「乳を揉ませるはねぇだろ俺‥‥」と当のイギリスも後悔したのだが、それは別の話として。それ以上にそのようなことをいきなり訊かれたカナダは、軽く染まっていた頬へ更に朱をのぼらせると、ふるふるっと首を振って否定した。
因みにこの首振りにあわせてたわわなおっぱいもぷるんぷるんと揺れたわけだが、イギリスの眼中にはまったくなし。カナダが「自分の娘で妹」という、謂わば射程範囲外だからといえば其れまでだが、‥‥それにしても珍妙な光景である。
が、そんな否定に一瞬胸を撫で下ろしかけたママ、もといイギリスに、別の意味での爆弾が投げて寄越された。
「ああ、あのっ、そうじゃなくって‥‥、ア、アメリカが‥‥。あとフランスさん‥‥」
「は?アメリカ?フランス?」
カナダの口から零れた、それは耳に馴染みすぎるほど馴染んだ元弟と腐れ縁の名前を、イギリスは単純に復誦した。が、その名前にさえ、カナダはいっそう顔を赤くして。
「‥‥その。この前、アメリカのおうちに泊めてもらった時、パジャマ持って行くの忘れたからシャツ貸してって言ったら、じーって見たあと『カナダ最近おっぱい大きくなったよね、俺のシャツのバスト伸ばさないでくれよ』って言われて。そそ、それに時々触ってきて、『君、ブラジャーちっちゃいんじゃないのかい?今度一緒に買いに行こう、可愛いの買ってあげるから』とかって、で、でもアメリカと下着買いに行くのなんて恥ずかしいし‥‥。それにその、フランスさんにこの前『‥‥カナ、ベビードールとか似合いそうだねぇ。今度贈っていい?なんならサイズもおにーさんが測ってあげようか?』って言われて。ベビードールって可愛いから一着欲しかった‥‥って、イギリスさん?!」
慌てたようなカナダの声に、イギリスはハッと我に返った。と、同時に、カシャンと硬い音を立てて銃弾が愛用のバーミントハント用リボルバーに装填された音が響く。手には先ほどまで付けていなかったはずの皮手袋。今この瞬間「掃射!」と言われてもコンマ1秒で射撃体勢に移れるだろう。勿論ターゲットは海を越えた元弟のKY国家だ!カナダの乳揉んでんじゃねーぞバカぁ!あと変態ヒゲ!!そんなに計測してーんならテメーの○○○自分で測ってやがれその前に俺がコレでブチ抜いて短くしてやっからよ!!
‥‥いや、弾丸が届く距離ではないのだが。それにしたって、‥‥自分でも一体それらリボルバーやら手袋やらを何処から取り出したものかさえ覚えていないのは‥‥いや、無意識って怖いな、俺。
「あのッ、え、イギリスさん、どうしたんですか?!」
「え、あ、う、‥‥いやなんでもない。うん。なんでも。大丈夫だ、カナダ」
「は、はぁ‥‥」
その行動を止めようとしたのかイギリスの身体へと抱きついてきている、どこか困惑したような下からの視線に、イギリスはそのどこからともなく取り出したリボルバーをとりあえずテーブルの上に置く。複雑な表情で見た愛用の拳銃は安全装置がはずれていた。一気に臨戦態勢までいったらしい。大丈夫か俺。
‥‥いやいやいやいや、いや!大丈夫じゃないのはカナダだ!!
「カナダ。よく聴いてくれ」
「‥‥?はい」
抱きついてきていた身体を、今度はイギリスから抱きなおす。
囲い込んだ腕の中から見上げてくる、柔らかな、既に少女ではない女性特有の柔らかさと甘い匂いを纏わせたカナダに、イギリスは重い口調で問いかけた。
「その。なんだ‥‥アメリカとか、フランスは、よくそういったことをお前に言ってくるのか?ていうか、アメリカの家に泊まりに行くとき、ちゃんと服や下着も持って行ってるか?まさかおきっぱなしとかしてないよな?」
「え?あ、フランスさんは、時々お洋服プレゼントしてくれるし‥‥えっと、その、ちょっと脚とか胸とか出ちゃうからあんまり着ないけど、くれる服っていつも流行のだし、可愛いから‥‥。それにアメリカの家にはよく行くから、部屋を一室貰ってそこに服とか化粧品とか、置かせてもらってます、け、ど‥‥?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
‥‥ちょっとそこの神様。そういうことは早く教えてくれないか。呪うぞ。
どこの神様なのやらイギリスにも解らないまま、ぼんやりと呪詛計画を脳内に廻らせたイギリスは、はあああぁぁ、と深い、この上もなく深いため息をついて、腕の中のカナダをぎゅっと抱き締めた。
柔らかい身体だ。見上げてくる瞳は潤んで美しく、つやつやとした桜色の唇はきっと甘いのだろう。細く華奢な腰と尻、俺のシャツ越しにはぷっくりと立ち上がっているピンク色の先っぽが存在を主張している。ああ、すっかり成長したんだなあカナダ、俺は嬉しい。
‥‥でもこの乳をアメリカやフランスに揉ませるのは論外だッ!!!
カナダ、これから俺が話すことをよく聴いてくれ。‥‥あのな、お前がアメリカの家に泊まりに行くのは構わない。お前たちはきょうだいだからな。部屋を貰うのもいい。お前は女の子だ、アメリカの気遣いにそこはきちんと感謝しろ。ただし!服は置くな。少なくとも下着は絶対に置いておくな。これはアメリカがどうこうってわけじゃなく‥‥いやどうこうってワケもあるが‥‥、レディの嗜みとして、だ。アメリカを迷わすな。あと胸は触らせたら駄目だ。下着なら今回俺がちゃんと測って合うのを買ってやる。
‥‥それと、フランスの件だ。アレは無視しろ。‥‥いや、お前の最初の養い親だというのは解るぞ?だがな、アレは無視しろ。服も貰うな。‥‥うん、流行の服が欲しいのはな、少しは解るが。お前は可愛い、きっと似合うだろう。うん、それも買ってやるから。‥‥可愛い下着が欲しいなら作ってやるベビードールでも何でも。俺の針仕事の腕は知っているだろ?今日サイズ測ってやるから。‥‥だから、アレは駄目です。俺は許しません。駄目。
己を抱き締めたまま懇々と、まさしく懇々と切々と続いた母親の言葉に、カナダはきょとんとした顔をしたのだが、それでも最後にはこくりと頷いた。
何故ならイギリスは、彼女の偉大な父であり、強く頼もしい兄であり、そして優しく甘い母親である、からだ。
‥‥なんだかずいぶんと、消耗しているけれど。
「えっと、イギリスさん?」
「‥‥いや、大丈夫だ。ええと、なんだっけベビードールか?」
「え、あ、はい。あのね、この前フランスさんがカタログ見せてくれて。『これとかカナに似合いそうだねぇ、ちょっと小悪魔チックなのとか!あ、でも純白フラワーレースでエンジェルっぽいのもなぁ』って」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。解った、俺が買ってやるから。レースなら俺が編んでやるし、ああ、もう全部作ってやるよ。ついでだからちょっと脱げ、全身のサイズも測っておこう。また服も作ってやるから」
「え、本当ですか?!やったぁ」
イギリスさんの作るお洋服、可愛くって好きなんです。なんて。
可愛らしい甘い声で言うカナダに、イギリスは少しだけ元気を取り戻したものだ。可愛い可愛い、大切な身内。そのまま可愛らしく健やかでいてほしいのである。
‥‥元弟や変態ヒゲの毒牙にかかることなく!!
「ハロー、イギリス!君のまっずいスコーンを食べてあげに来‥‥、ッは?!カナッ、なん、何でキミ裸で‥‥ッ?!!」
「うぃーっす、可哀想な食生活の隣人にお兄さんから愛のおやつ差し入れだぜー、って坊や、いっくら古臭い頑丈な作りのドアだからって蹴り開けたら壊れ‥‥へ?‥‥‥‥え?」
「きゃ‥‥ッ」
「テメェらにコイツは渡さねええええええええ!!!!」
折りしも英国は、和やかなティータイム。を、ちょっと過ぎた時間帯。
卓上にはアボカドとモッツァレラのサンドイッチにヴィクトリアサンド、茶器と銀器は伝統と格式ある自国工房のセット、茶葉は馴染みの店が誇らしげに薦めてくれたブレンド。美しいカットの施されたガラスの小瓶には、ふんわり甘い香りのメイプルシロップ。メジャーと手鏡と、拳銃。
そして腕の中には、ふんわり甘い匂いの柔らかで艶かしい裸身を晒した、大切な大切な、イギリスの身内の姿。
ドアを蹴破って入ってきた2名に、セミヌードの娘を抱き込むようにして隠した後、ママの拳銃が火を噴くのは、あとコンマ1秒後。
パーフェクト・マム・ショット!
the end.(2009.01.01.)
因みにメリカはこの後涙目で
「ちょ、あれ何なんだい?!な、なんでカナッ、イギリスと‥‥!うぅッ」
「はいはい坊や〜、落ち着こうねぇ?ていうか鼻血ふけ、鼻血。」
と兄ちゃんと屋敷の隅でお話です(笑)
もちろんメリカはカナ狙いだよ!兄ちゃんは着飾ってハァハァしたいんだよ!
ていうかイギにおっぱいおっぱい言わせたかったんだ(・∀・)
本当はブラに手ぇ入れて寄せて形整えてあげるつもりでしたが、入れ所がなくなりました残念。
2009.01.04追記 ちょっと手直し。