クリームカラーの壁に背を預けて、ガランとした室内を見渡す。
まだ初々しい木の匂い。
足を伸ばして座った床は、まだピカピカの飴色。
頭上にあるのは両開きの、少しだけ開けたオリエル窓。


「カナー。リビングのカーテン、この色とこの色、どっちがいい?」
「ええと、‥‥こっち?」
「ん、じゃそれな。客間は‥‥そうだな、これでいい?」
「はい」


床に投げられているのはたくさんのカタログ、優しい夏の風に促されてハラハラと、控えめな商品説明をしてくれたり。
どれも素敵に見えるのは、零れる夏の光に優しさを分けてもらっているせいかな、なんて。


「このカトラリーセット、素敵」
「どれ?‥‥うん、いいんじゃないか。どうする、注文する?」
「んー、‥‥でも、食器はお店で実物見て買ったほうがいいかも‥‥」

「じゃあ第一候補ってことで、ショップ巡りしてそれ以上のがなければ、それにしよう。どう?」
「あ、はい、それで。‥‥ありがと、フランスさん」
「一緒に使うものだからな、よく吟味しような?」
「‥‥ふふふ、はぁい」


緩衝材をつけられたままのドアノブやライト、ドアの向うにチラリと見えるのは、保護シートが貼られているシステムキッチン。


「‥‥作りつけるタイプの小物は俺が勝手に選んだからなぁ、何か気に入らないのあれば、今からでも付け替えるよ?」
「え、僕フランスさんが選んだの、好きですよ?棚とか‥‥特に玄関の扉とノッカー!すっごくシックです」
「そ?気に入ってもらえてお兄さん嬉しいなー」
「でも、インターフォンも付けたのに何でつけたんですか?あ、いえ、ドアにすごく似合ってるからいいんですけど」
「んー?‥‥お前が小さい頃、俺の家に来てノッカー見てはいいなぁって言ってたから、つけてみた」
「えええ?!」
「まぁだ背が足りなくて手が届かないからって、その度抱き上げてやってたっけなー」
「‥‥ッ、何でそんなことばっかり覚えてるんですかぁ!」
「何言ってんの、お前との思い出ならあんなこともこんなことも全部覚えてるよ」
「もう‥‥」


選ぶ、選ぶ、選ぶ。
シックなインテリア、可愛らしいテーブルウェア。
カーテンを掛けて真新しいシーツにくるんだベッドを設えよう。
瑞々しい観葉植物、壁に掛けるタペストリ、時計は機能的なのがいいか、それとも遊び心に溢れたデザイン?

‥‥ああ、でも本当は。本当に、必要なものは。


「カーナダ。こっち向いて」


クリームカラーの壁に背を預けて、ガランとした室内。
まだ初々しい木の匂い。
足を伸ばして座った床は、まだピカピカの飴色。
頭上にあるのは両開きの、少しだけ開けたオリエル窓。


そして隣りには、可愛い愛しい、大切なひと。


「フランスさ、ん、‥‥」


重ねた唇、つないだ手のひらの優しさを、覚えていよう。
覚えていて、大切に、優しさを積み上げていこう。


「それじゃ、カナダ。これからよろしく。仲良くしような?」
「‥‥‥‥はい、フランスさん。よろしく、お願いします」









さぁ、結婚しよう。必要なものなんて、本当は、貴方だけ。









la fin.(2008.08.15)

入居前の新居にて。家具選びは楽しい。