「そう。‥‥優しい人だから、優しくしてあげてね?」
「‥‥‥‥‥‥ああ、優しいな、アイツは」
「そうだよ、僕の、自慢の兄だもの」
「相変わらず料理は酷いけどな」
「ふふ、もう言わないであげてよ」
「‥‥一生懸命なんだよな。目が、離せない」
「うん。ねぇ、愛してあげてね?たくさん、たくさん」
「‥‥ああ」
「寂しがりなんだよ、アーサー」
「‥‥知ってる」
「そうだよね、ずっと、一緒に、居たものね」
「ッ、マシュー、俺は、‥‥俺は本当にお前のこと、ずっと、」
「フランシス。最後に一つだけ聞かせて。」

おっとりとして甘い甘い、人の心を落ち着かせるマシューの、凛とした声がフランシスの耳を打つ。




「フランシス。‥‥貴方は、いま、幸せ?」




真摯な声で。誰よりも愛した、愛しぬいた甘い声が、誰よりも優しく、愛を込めて、問いかけてくる。




「幸せだよ。‥‥アーサーを愛して、あいつの傍にいれて、幸せだ」




そして、かつて愛し尽くした、青年へ。今ある時間の中で愛する恋人の姿を思い描きながら、震える声で、震える心で、伝える。









そう、よかった。と。
ふんわり甘い声は、その場に落ちた彼のための結婚指輪がたてた、澄んだ音に溶け合って。
いとおしい、美しい姿と共にゆっくりと解けて、消えた。



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