こちらは『Gettin' in the Mood!』(米×にょ加)のいわばオマケです。
先に此方を御覧になってからお読みいただけたら幸いです。
ただし、どっからどうみても英にょ加です(笑)










アルミキャップがパキリと軽やかな音を立てて封切られる音に、イギリスは静かに口元に笑みを刻んだ。
未開封の酒を空ける瞬間というのは酒好きにはたまらない瞬間だ。
瓶の首を持ち支えるラムの芳香は軽い素直なオーク。この匂いを嗅ぐと深く青い海と空を思い出すのは、それはもう自分が『イギリス』である限り仕方のない話なのだろう。‥‥かつて七つの海を制し世界に覇を唱えた時代、まったきこの芳しき飲み物は海の男達の血であり命綱であったのだ。
まるでそれが昨日のことのように思い出されるこの芳香、けれど今は単純に余暇を楽しみ、心を潤す為に。
タンブラーに注いだラムを無造作に口にしつつ、イギリスはミニバーの棚からラムと一緒に取り出していたシェイカーを開ける。そこにラム、先ほどコンシェルジュに頼んで持ってこさせた、パイナップルのフレッシュジュースとココナッツミルクを計量して入れていった。クラッシュドアイスは加えずシェイクし、それをアイスを詰めたゴブレットへと流し込む。美しい乳白色。ピニャ・コラーダだ。
ジュース類を頼んだ際にコンシェルジュには、ホテルの地下にあるバーで作らせてお持ちいたしましょうかと提案されたものだ。
確かにこのバカンス中にも幾度も通っているバーのバーテンダーの腕は確かで、頼めば美味いカクテルを持ってきてくれたのだろうが、そこはちょっとした暇つぶしも兼ねての自作だ。
それに飲ませる相手が、可愛く愛しい大切な相手ともなれば、楽しい手慰みでもある。
出来上がったカクテルにストローを添え、片手には己のラム、もう片手にカクテルを携えると、イギリスは簡易キッチンを抜け出し、広々としたリビングを横切る。その向こうには主寝室と使われていないゲスト用のベッドルームが2つ。豪奢なつくりだ。優しいパステル調に整えられた伝統的なバハミアンスタイルの室内は、素朴ながらけれど使われている調度はよく吟味された一級品で、何事にも格や品を求めるイギリスの美意識に良く合っていた。そもそもこのホテルのオーナーが英国人で且つイギリスの知人、というつながりで、はるばる大西洋を越えてバカンスに来ているのだ。
ここ暫くは国家としても個人としても頭の痛いゴタゴタ続きではあったのだが、バカンスはバカンスとしてきっちり気分を入れ替えようと招きに乗った選択は正解だった。本国に帰ったら改めて挨拶に行き、おそらく彼がイギリスに期待しているのであろう、このホテルの名に箔をつけることが(勿論、『カークランド卿』の名前もその類の力はそこそこにあるのだが)出来る相手を紹介しようと思う。

‥‥それに、個人的な悩みの種はとりあえずの解決を見たようだし。

リビングを抜け様、卓上のフルーツバスケットに盛られていたチェリーを2粒摘まんでカクテルの上へと落とす。
それから、大きく開け放たれたままのバルコニーへと続く窓へと歩いていった。
ペタリ、と足音が変わる。水の気配が剥き出しのイギリスの腕や胸を撫でた。
室内履きは窓の向こうに取り残されて所在なげに、代わりに熟練の職人による見事なタイル張りのバルコニーを、イギリスは裸足で歩いていく。水の匂いは、眼下に広がる宝石の如き海の其れではない。低い機械の駆動音が足裏越しにイギリスへと伝わる。見上げた空は、今にもほろほろと光の欠片が降ってきそうな、見事な星夜。
そして視線を返して、足先と同じ高さにいる、相手はといえば。

「‥‥ほら」
「ありがとうございます。‥‥えへへ」

ちゃぷん、と透明な水音と一緒に差し出された華奢な手に、イギリスは屈みこんで甘いカクテルをいれたゴブレットを手渡した。水底に取り付けられた照明が湯を透過して、カクテルを淡く浮かび上がらせる。水の青を微かに纏った乳白色に添えたチェリーの赤が映えて、妙に可愛らしい。
もっとも、そのカクテルを受け取った相手こそ、その数倍も数十倍も可愛いとイギリスは思っているわけだが。

「カナダ、チェリーひとつくれ」
「いいですよ。はい」

摘み上げた指先が、しゃがみ込んだイギリスの口元に寄せられる。そっと唇に触れてきたチェリーの冷たさに逆らわず口を開けると、指先ごと口の中に押し込められた。

「こーら、お前の指は食えねぇぞ」
「えー?チェリー味じゃないですか?」

くすくすと楽しげに笑う声は甘く、広々としたジャクジーの水面にほろほろと零れては踊っているようにさえ感じる。
尚も口内に残る白い指先に、イギリスは苦笑すると舌先でその指をペロリと舐めてやった。途端にぴゃっと逃げていったそれにくつくつと笑えば、ちょっと拗ねたような甘えた青灰色の目線が上目遣いにイギリスへと向けられる。
自分から仕掛けるイタズラは良くても、イタズラを返されるのはお気に召さなかったらしい。

「私の指、食べられないもん」
「知ってるよ、チェリー風味だったけどな」

笑みを含んだ言葉で返せば、パシャリと大きく水が跳ねた。白く、締まった足首からふくらはぎが水面から空へと差し伸べられている。綺麗に反った爪先、瑞々しい素肌を湯の雫が転がり落ちていく。空から降る星明りと水底からのライトが、彼女の裸体を幻想的に美しく染め上げていた。

「あれ、お前足の爪なんて塗ってたか?」
「お昼に下のエステサロンで塗ってもらったんです。ほら、昨日私がついたとき、イギリスさんが紹介してくれたオーナーさんが、どうですかって。可愛いでしょ」
「ああ」

コンク貝をイメージしているのだろう、シェルピンクの下地にラメ入りのシルバーで小さな星が描かれている。それはカナダの白い肌に良く似合っていて、イギリスが素直に頷けば、どうやら機嫌を直したらしいカナダがエヘヘと笑いながらパシャパシャと足先で水を叩いて遊んだ。

「ねぇ、イギリスさんも入ろ。気持ちいいですよ」
「ん。」

精緻に整えられたタイルの上、無造作に座り込んでラムを呷っていたイギリスの膝をカナダの濡れた指先がぴとぴととタップした。良く見れば、なるほどこちらも綺麗なシェルピンクに染められ、此方にはゴールドとウルトラマリンの星が散りばめられていた。若い女性らしく、普段から爪はそれなりに整えているカナダだが、こんな風に派手な塗りはさすがに仕事中には出来ないだろう。これもバカンスならではだな、と男の自分にはない楽しみ方にイギリスは和やかな気分になりつつ、羽織っていたシャツを無造作に脱いだ。 更にベルトをせずに穿いていたコットンのパンツとアンダーウェアも脱ぎ去ると、全くの全裸でカナダの居るジャグジーへと身を滑り込ませる。
広々としたつくりのジャグジーは、男女二人が足を伸ばしてはいってもまだ広いくらいであったが、カナダはそっと隣に入ってきたイギリスを見上げながらくすくすと甘えた声で笑った後、はーっと長く息をついて湯に寛ぐ男の身体に、自らの其れをぴっとりと擦り付けるようにして、膝の上へと向かい合わせに乗り上がった。

「ん、コラ」
「エヘヘぇ。イギリスさぁん」
「もー、しょうがねぇなあ」

甘えきったカナダの声に、イギリスも苦笑しつつ甘い声で返す。
ちゃぷりと透明な水が揺れ、イギリスの足の高さぶんだけ湯から出た彼女のたっぷりとまろやかな胸の上を、水滴がまるで宝石のように転がり落ちていく。まっしろでぷるぷるとした豊かなおっぱいは先端のピンク色がツンと上向き、そこにぷくりと下がっていた雫を、イギリスは指先で可愛らしい乳首ごと弾くようにして払った。ん、と甘い声が今はイギリスの頭よりも高い場所から降って来て、その声につられるように仰のけば、イギリスさんのえっちー、と甘く朗らかな声が笑い声と一緒に寄越されたものだ。

「はいはいエッチだよ。ほら、肩が冷えるからもう座れ」
「はぁい」

イギリスが座ったまま緩く足を開けば、その間にカナダの細い体が方向を変えて、するりと滑り込むようにして落ち着く。男の胸を背もたれ代わりにしたカナダは、己の腹の上で緩く組まれたイギリスの手を持ち上げて、己の指と絡めて遊んだ。

「イギリスさん、指ながいですね」
「そうか?お前はあれだな、手のひらがなんかふっくらしてるよな」
「‥‥それって、私が太ってるってこと?」
「ちげぇよ。握りやすくて可愛い手だってこと」

そういうなり、イギリスはそれまで力を抜いてカナダの好きにさせていた手で、逆に彼女の手を優しく握りこんだ。小さな手である。イギリスは男にしてはそう体格が良いほうではなく、手もそれに見合った大きさなのだが、さすがに男女差というのは大きいものだ。
小さくて繊細な女の手。とはいえ、昔に較べれば、ずっとずっと立派に、大きくなっているのだが。ああ、実に、こうして抱いていればよく解る程度に、立派に、ぷるっぷるに。

「イギリスさぁん」
「んー?」
「呼んでみただけ」
「んー。」

機嫌よさげに笑う彼女を抱きつつ、イギリスは片手を伸ばしてタイル上に置いていたラムへと手を伸ばし、呷る。細胞の隅々にまで染み渡るような爽やかな舌触りは、南国でのバカンスに相応しい味だった。




‥‥実に、恋人である。
どこからどう見ても、恋人同士である。
なんとなく迫力のある物腰のリッチな青年に、若く愛らしく、とびきりエロティックなプロポーションの女性。
会員制高級リゾートホテルの最上階、インペリアルスウィートを長期間借り切ってのバカンス、何をするでもなく、ときおり戯れては笑いあい、眠くなったら寝る。これでイギリスがもう少し男くさい外見であれば、いったい何代目のジェームズ・ボンドかといったところだろう。
実際問題、このホテルのオーナー氏も昨日からイギリスの元へとやって来た彼女を、彼の正式なパートナーとして丁重に遇していた。

が、その実情はといえば、違う。かなり、違う。

否、カナダがイギリスにとっての大切な相手だというのは、全く持って本当のことだ。カナダにとってのイギリスも然り。この光景を見たときに100人居れば150人くらいが「恋人だ」と断じるであろうこの二人、なのだが。

「‥‥ん?カナダ、お前ちょっとおっぱい大きくなったか?」
「あ、気がつきました?んん、そうなんですよね、この前からちょっとだけ、サイズがあがったみたいで。‥‥ァン」

むにむにと、イギリスの手がカナダのたっぷりとした胸をゆっくりと揉みしだく。湯の中で行われる触れ合いはもどかしいほどにゆっくりと、手つきだけ取ればとんでもないほどにいやらしい。‥‥しかしながら、なにか、どこか、おかしい。
一方触られている側のカナダのほうはといえば、己の胸を揉んだり摘まんだりする男の手のひらを、恥じらうでもなく止めるでもなく眺め、相変わらずのおっとりほんわかした声で問いかけに応えていた。ときおり甘い喘ぎ声があがるのは、生理現象だといわんばかりの普通さだ。やはり、何かが違う。
外見上も触れ合い方も、どこからどうみても恋人同士である。
もしも彼女の『本当の恋人』がみたとしても、「君達はどうしてそうなんだい?!」と涙目‥‥いや本当に泣き出して喚きかねないイチャイチャっぷりだ。




‥‥そう、彼女の、『本当の恋人』。




「あー、アイツおっぱい大好きそうだもんな。なんだ、エッチんときにやたら揉まれるとかか?」
「ううん、エッチの時っていうか‥‥わりと常時?なんか、私のことぎゅってして一緒にテレビ観てるときとかも、たまにまさぐってくるんですよね。しかも殆ど無意識。私が感じちゃって、声上げたら、慌てて放すんですけど」
「放すのかよあのヘタレ」
「や、そこが可愛くっていいところなんですってば。‥‥あ、その揉み方気持ちイイ‥‥ンぅ、ぁんッ」
「イイやり方教えてやるからアイツ調教しろ。‥‥あー、アイツ、アレだろ。下着の色とかにこだわってくるタイプだな。パウダーピンクとかフロストブルーとか好きじゃねぇか?あとヒラヒラのレースや刺繍入り。ええと、ほら、少し前に俺がパリで買ってやったヤツなんてジャストミートだろ」
「あ、すごーいイギリスさん!大正解。‥‥ふぁ、ン、あれね、パンティとおそろいで着けてたらすっごい元気で。いつもはすっごく優しいのに、ちょっとワイルドでカッコよかったぁ‥‥アン、先、もっと触って‥‥」

‥‥‥‥実に、見た目は恋人同士で、実に‥‥内実は形容不能な関係の二人である。
因みに二人は互いを兄と妹、或いは母親と娘だと考えているのだが、世界中の何処を見回したところで娘へ気持ちのイイ胸の揉まれ方を伝授する母親など居ないのだが。




「ここに居るだろ、ここに」と開き直るのがイギリスがイギリスたる所以であった。




ちゃぷちゃぷとイギリスの手の動きにあわせて水面が暢気に揺れている。
可愛らしい甘い声を上げつつ、それを甘受している、カナダ。
妙にほんわかした、しかしテクニックだけはやたらとエロティックなペッティング終了後は、再びぺったりと身体を寄せ合って、甘えた声での会話だ。

「イギリスさぁん、カクテル飲ませて」
「ん。‥‥ほら、口開けろ。フルーツいるか?」
「後でいいです」

戯れ、触れ合い、見つめあって笑う。
外見上は、なんとも正しいバカンスの過ごし方をしている二人だ。その関係性を鑑みなければ。

「そういやアイツは今何してんだ?バカンスシーズンだろ」
「だぁめ。‥‥ちょっと前にもうバカンスは消化済みだろって、今はホワイトハウスに軟禁状態だって、うちの上司が」
「ははぁ‥‥」

少し拗ねた口調で言うカナダの、湯から出た首元や肩に湯をかけて温めてやりながら、イギリスは苦笑する。




‥‥あの頃のカナダは本当に苛々しどおしで、扱い難いを通り越して親として可哀相でさえあった。
さもありなん、相手の心は判りすぎるほどに判っている、無意識に束縛する言動もねっとりとした男の熱を含んだ視線も何もかも彼女に注がれて、そのくせ実際には一度たりとも手を出してこないのだから。それは苛々もするだろう。
もしもこれが何か別の件、単純に彼女の‥‥当時はそうではなかった恋人が彼女を悲しませたであるとか怒らせたであるとかならば、イギリスは即座にグレネードマシンガンを背負って大西洋を越えていたことだろう。
だがしかし、事はそう、彼が口を出すわけには行かない問題だった。

どんな相手であれ、其れがどのような結果をもたらすにせよ。恋愛は、当人同士で解決しなければならない。

それがイギリスの持論であり、‥‥あの、見た目に反して少し臆病で純情な、もう一人の愛しい弟への、エールでもあった。
斯くして少し早めの休暇にリラックスしている彼に対し、いい加減焦れたカナダが上司からやや強引に短い休暇をもぎ取ってかなりの直球勝負を挑んで。それに勝利したのが、あの頃、あのバカンス。

(‥‥まぁあれで決着しなければ俺もさすがに一度殴りに行こうかと思ってたんだがな‥‥)

身体の方向を転換して、今はイギリスの胸へと自らのふにふにぷるんとしたおっぱいを押し付けるようにして懐いたカナダが、イギリスの肩を枕代わりに彼のラムを舐めるようにして飲んでいる。
ずり落ちないようにとその細い腰を支えてやりつつ、イギリスは深い息をついて、空を見上げた。

星が降ってきそうな、夜空。‥‥この子ども達が初めて触れ合いながら見た夜空は、綺麗だったのだろうか?

(それは、訊かないけれど。)









何故といって、それは恋人達だけの、秘密だから。
だから自分も、この星空に子ども達の幸福を願い祈ったことは、秘密にしようと思う。









「‥‥ま、今はだな、カナダ」
「え?」

夜空から視線を落としたイギリスは、腕の中の愛しい娘をぎゅっと抱き締めた。その腕に、ややきょとんとしたようにカナダがイギリスを見返す。
潤んだ青灰色の瞳、ハニーゴールドの美しい巻き毛。
甘く芳しいラムに濡れた唇は、もう既にイギリスのものではない。

けれど、彼女がイギリスにとり、大切で可愛くいとおしい相手であることは、永遠に変わらないから。

「俺と楽しいバカンスを過ごしてくれよ?」

そう言ってカナダの滑らかな額へとチュッと音を立ててキスをしたイギリスに。
仕事に忙殺されて恋人へのサービスも出来ない、相も変わらず困った恋人へ捧げる笑顔とは似て非なる、優しく甘えた笑顔を向けて、勿論、と軽やかにカナダは言ったのだった。




「あー、んじゃ今日はもう寝るか」
「はぁい。イギリスさん、抱っこ」
「ったくお前はぁ。ホラ、腕こっち。‥‥あ、明日は何する?」
「起きてから考えましょうよ」
「だな」

ポタポタと身体から滴る雫は適当に互いが拭いあい、後はふかふかのベッドに二人で潜り込む。すぐにウトウトと眠り始めたカナダの頭を撫でてやりながら、さて明日の朝の紅茶はどの銘柄にしようかと、ラムと腕の中の温みに幸せな気分になりつつ、ぼんやりと考えていた。

(‥‥あ、バカンス終わったらコイツのおっぱいのサイズ測りなおして、新しいの買ってやらねぇと‥‥。)









‥‥因みに、こんな二人のバカンスを知ったカナダの恋人でありイギリスの弟が、「君達はどうしてそうなんだい?!」と予想と一言一句違わぬ文句で泣きながらロンドンを訪れるのは、この約3ヵ月後だ。









 PINKY DINKY VACATION





end.(2009.06.13)

そんなわけでカナちゃんとイギお母様のらぶいちゃバカンス(´∀`)
オーナー氏には当然恋人か婚約者と思われてけれど双方否定しない
今回のホテルはバハマのどこかをイメージしてます
いや、イギ様はバッカーニアでキャプテン・ドレイクが居たのでなんとなく。ええ。
因みにこのバカンス中カナちゃんは携帯の電源切ってます。
メリカは毎日泣きそうになりながらカナダの本宅に留守番電話入れてたんだ‥‥ぜ‥‥。