ピーーーーーーー
甲高い電子音が、長く、廊下に響き渡った。
マシューは瞬きしてから、自分の手に持ったIDカードを見つめる。
指輪の填められた、左薬指も、見えた。‥‥愛の、証だって。今さっき、渡された。
「あれ?」
赤いランプが明滅している。電子認証にエラーが出たのだ。
マシューはきょとんとした後で、もう一度手のひらに握ったIDカードをチェッカーに通した。エラー。スライドドアは、開かないまま。
「マシュー」
「あ、フランシスさん、あの、ドアが」
「‥‥うん」
いつの間に追いついたのか、マシューの背後にフランシスが立っている。
いつ見ても美しい恋人だった。マシューよりも少し年上で、いつも華やかで、美しい笑みを浮かべて、くれていた、のに。
「‥‥え?、って、え、フ、フランシスさんっ?!ちょ、何、なんで泣いて、」
「マシュー、マシュー‥‥ッ!」
「え‥‥?」
「頑張ったね、頑張った、お前凄いよ、頑張った‥‥!ごめんな、ごめん、迎えに行けなくてごめん、傍に居てやれなくてごめん、俺が、俺が、ぁ、た、助けてやれなくて、お前を、ひ、ッ、ひとり、でぇッ、‥‥!」
泣きじゃくる恋人を、抱き締めたかったのに。
強く抱きすくめられる、その腕を、抱き返したかったのに。
‥‥いつまでも、いつまでもずっと二人で、傍にいれるのだと、思っていた、のに。
「ひとりで、マシュー、‥‥死なせて、ごめん、ごめ‥‥ごめん、ごめん、ごめん、ぅ、‥‥うー‥‥ッ!」
過去形。‥‥もう、失ってしまった、未来には続かない、二人の時間。
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